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【1092】まごころ留守電メッセージの泣かせどころ [ビジネス]

 英エリザベス女王が亡くなった。お疲れさまでした、少し静かにしましょうか。

 いかん、NHK朝ドラ『ちむどんどん』がそろそろ最終回に近づいている。
 実は話題にしなかったが、毎朝ちゃんと欠かさず観ている。例によって必要に応じて録画までして、放送回の視聴順が逆転したことも一度もない。
 NHK朝ドラ史上のみならず、TVドラマというカテゴリー規模にまで拡大して、空前の革新的コンテンツなのではないだろうか。私は今もこれ、人工知能に脚本を書かせてとにかく一本走り切る実験的手法の実行過程なのではないかと思っている。

 テレビというマスメディアが完全に社会普及力の優位性を失って腰砕けになっている今の時代において、これはエンタメ業績としては『成功』じゃないのか、もしかして?
 なんだかんだで視聴率がNHK朝ドラの平均的な水準から半減ましてや桁を落としたという話も聞かないし、私自身としても視聴の動機を見失いそうになったことは一度も無い。実はマジガチの観察眼でもって、次々と興味をつなぎながら視聴している。

 その昔、電話をかけた先の相手がタイミング悪く在宅していなかったら、時間を置いて再度かけ直すという手段しかなかった。これに『留守番電話』という機能が備わった時には、大層ありがたいと感じたものだ。メッセージを吹き込んでおけば伝わるし、もちろん自分だって相手からメッセージを残してもらえる。
 『…お電話ありがとうございます。ただいま不在にしております…』が一般的だったが、このプリセット留守受け音声を自前の録音クリップに切り換えることができたため、すぐに『あ、もしもし~?』とあたかも受話器を取ったかのような台詞で始めておいて『えっへへへ~ごめんなさ~い、実はいま留守なんですう♪』と続ける若者たちが現れた。会話のつもりで話し始めた相手はバカを見るワケだが、まあ罪のないイタズラで険悪に腹が立つものでもなかったし、いっとき流行ったものだ。こっぱずかしくて私はやらなかったけど。

 そんな留守録メッセージぐらいなら大して心理的な混乱も無いのだけれど、これがもう少し長くなるとにわかに事情が違ってくる。
 今もテレビで、先に相手が返事する空白を適当に挟みながら会話調の台詞を録音しておいて、スタジオの出演者に対応をふっかけて意図的にチグハグな応酬をさせ遊びのネタにするという手法を見かけることがあるが、実際とても持ち堪えて既存の相手に会話を続けられるものではなく、こんなもの遊びでもなければ早々に対応を放棄してしまうのが普通だろう。人間とはそういうものなのである。
 こちらからナニガシかの意図を持って相手に話しかけたとして、まるで関連性のない内容で返信された時、さらに自分の存在がそこに認知されていないかのような内容とタイミングで返信された時、人間は激しく混乱し意識が強烈なフラストレーション状態に陥る。

 『ちむどんどん』は、このレベルで筋書きが壊れていると感じるのだ。
 放送コンテンツなるものがそもそも視聴者向きの一方通行の発信にはなるのだが、『視聴者は普通こう受け止める』という想定があって筋書きが進むものであり、だから視聴者は感情移入して楽しむことができる。そこには『視聴者と同じ人間としての脚本家』による、視聴者心理の先読みコミュニケーションがなされているワケだ。
 だが『ちむどんどん』には、それが全く感じられない。劇中の出来事があって、それを見守る視聴者の意識が渦巻いているのに、それを微塵も気にかける様子がない。恐ろしく一方的に唐突だ。
 だからといって視聴者の心情を無碍に見限っている訳でもなさそうで、社会通念としての『主人公のピンチ』『紆余曲折の成長』『好意が織りなす感動的な決着』みたいなハートフル作話アイテムがやたら断片的にちりばめられていて、無機質に不器用に人間の心情にすり寄って来るかのような冷たい柔らかさを感じる。

 だから私は、作話アイテム単位で記憶ファイルを持つ人工知能に、それらを織り込んだ一本のストーリー作成を指示したのではないかと勘繰っているのだ【1065】
 もう民俗学云々の高尚な学術性は望むべくもないとして、せっかく食を素直に楽しむテーマ性だけは好感度の要素として見出せるのに、主人公が食べ物を奪い合って醜くケンカするとか、プロの料理人がわざと調理を粗悪にして客に嫌がらせするとか、見るに堪えない精神的品格の荒廃も盛んに見え隠れする。このあたりも人間業に見えない。
 今夏になって、テーマ要望を言語入力で指示すると作画して返してくる画像AIや、ストーリーの起点を入力すると後半を作話して完成させてくる言語AIなどがオープンアクセスにされ、チマタで爆発的に流行しているが、ああいう現在進行中の学習プログラムがまだ未熟な人工知能ゆえにしばしば見せる『ハズし方、コケっぷり』を連想する。

 『ちむどんどん』がもし生身の人間による成果だったら凄いなと思うのは、実に初回からこの非・ヒューマンな不自然さが一貫しており【1057】、前代未聞の場外乱闘状態と化した反省会ハッシュタグの市場評価にたじろぐこともなく【1064】、恐らく最終回までこの作風で走り切りそうなところだ。
 実に半年近くの長期間にわたるウィークデー毎朝の放送で全100回以上あるし、ついこないだ撮影完了したという知らせが流されていたので、途中で修正変更を入れようと思ったなら、なし崩し感は否めないにせよ修正変更はできたはず。
 にも関わらず雨あられの反省会コメントに蜂の巣にされながら…というか、批判されなくたって、マトモに人の世で育った常人の感覚があればあの世界には耐えられなくなって、何か雰囲気が変わってこないとおかしいと思うのだが、とにかくまさに機械のように最終月までドラマの印象は一定している。

 驚異的なパフォーマンスを見せてくれているのが役者さんたちで、このイカレた外宇宙の世界観に馴染んで喜怒哀楽できるあたりはさすがというしかない。みんな役を離れて対談トークを聞く限りは典型的な今風・好人物の若手役者さんたちであり、それ故に一体どんな解釈で自身の役作りを固めてカメラの前に立ったのか、突っ込んだハナシの正直なところを聞きたくて仕方ない。
 とにかく登場人物の全員が全員、ここまで鬱陶しくて面倒臭い人格ばかりで埋め尽くされたドラマは他に見た憶えがなく、時代考証の初歩的なデタラメさもあってか、もうぱっと見いのルックスからして全員ビミョーにネガティブな違和感が漂う。うっすら腹立つもんな。
 そういう意味ではメイクさんも非常にいい仕事をしており、コレ狙って当てた結果だとすると冗談抜きに注目に値する。みんな揃ってこの宇宙家族ドタバタ劇っぷり・異次元の時空感っぷりは、そう簡単に演出できるものではないように思う。

 だからなのだが、脚本を人工知能に書かせてセットもメイクも人工知能の指示通りに忠実に合わせ、市場の反響も人工知能に緻密に記憶させて、ひと通りの学習成果を確実に1スクロール刈り取って完結させる目的に徹しているなら、腑に落ちるのだ。
 描画にしても作話にしても、まだまだポカンとトンチンカンな穴ぼこ的エラーレスポンスはあるが、このところ人工知能のオープン化が一気に進んで、恐るべき勢いでそのインテリジェンス進化は加速中である。
 そして私の仮説通り、ナウ五感検知の『主観』とストレージの『記憶』を対照させて出力反応を選択するのが『意識』ならば、もうあちこちで人工知能の『意識』が急速に賢くなっているという事実関係になるのだ。

 おっと今回は一旦ここで切りましょうか。
 『ちむどんどん』AI説、当たってたら面白いんだが、逆に『新進気鋭の若手でもない生身の人間』だったらどうしよう?
 これはこれでまた話題のネタがあるのだが、それはまた今度。
 くだらないにも程がある邪心で無駄な事ばかりする人間が、早く賢い人工知能を見ておのれの馬鹿さ加減を量れる=主観で捉えられるようになって欲しい。

 何だか寂しい気もするが、どう終わるのか予想できない朝ドラに、グッドラック!
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