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【895】バブルの苦節メモリーで選ぶ大阪の明日 [ビジネス]

 古電球を海外に逃がすのは良いんだけど…って全然良くなくて、税金無駄遣いのガチ『外遊』は切り上げさせて、さっさと国民の前にひったてろっての。内閣総理大臣が担当することになっている業域が問題起こしてるんだから、内閣総理大臣は最優先でその問題の解決に取り掛かる。これが国務だ、遊んでんじゃねえ。

 …と、愚痴ってもラチは開かないので、思い出話から始めてみる。
 いわゆるバブル崩壊を迎えて日本社会がいよいよ景気の失速を実感し始めた頃から、大企業では軒並み部署の統廃合が進められた。それまでの『組織設計コンセプトの使い古しで発生してくる弊害の一掃』を目的とした組織改編ではなく【398】、端的に組織表に載るナニナニ部とかコレコレ課の数が減り、いつも通りの職場でいつも通り見かける顔ぶれはそのままの日常としながら、会社組織体を細分化する部や課のひとつあたりの規模が大きくなり、粗い区分けになったのである。

 何故こんなことをするのかというと、中間管理職の数を減らしたいからだ。
 ざっくり50人規模の課×10課=500人の部があったとしよう。単純計算で、その部には部長・次長がいて、その下に課長が10人いる。
 これを2課ずつ統合して100人規模の課×5課=500人にしてしまえば、当然課長は5人に減らすことができて、課長待遇の人件費が5人ぶん浮かせられると、まあ単純かつゲンキンな作戦だ。
 えっ?それって課長さんのお仕事が倍増するということなのでは…?という心配はあって自然だが、そこはそこ、ただ傘下の兵隊が倍増したからって管理職として処理すべき業務量がまんま倍増する訳ではなかろうと。
 絶対きつくはなるんだけど、各々知恵を絞ってどこまで頑張れるか成立解を探らせてみて、致死レベルの現実問題が起こったらそこに手を打っていけば正解に到達するはずだという、まあ民間の営利企業ではポピュラーな考え方である。

 薄らダラダラ職場の日常に身を任せて仕事しているつもりで勤続を重ねればどんなボンクラも長老扱い、オフィス全体を俯瞰しやすいとして壁や窓を背負う席を与えられ、走り回って手を動かす直接実務領域は全て部下たちが片付けるものとされて、少々寂しさもあるがオレもこんな立場にまでなったのか…と感慨にふける『窓際族』などというヌルくてユルい双六ゴールの存在は、自由競争市場で弱肉強食のバトルフィールドを勝ち抜き、業界で石に噛り付いて死んでも生き残ろうとする『普通の企業』において、とうの昔に『経営なんてやらなくてもカネが降ってきていた時代のおとぎ話』になっていた。
 ともあれ、無理を承知で各課なりの業務効率ブレイクスルーにまで賭け、よくして課長待遇の5人減がそのまま収益改善に化けたなら、組織経営としては勝ちだ。

 『課』という組織単位を設定すると、そのくくりで人事も財務も完結させて管理するフェーズが発生するため、そこ専用に人員リストも予決算管理表も起こすことになる。合計何人でどんなヤツが誰々いて、ウチの課は今年度おいくらの予算をつけてもらってこんな業務計画で攻めます、今こうなってます、結果は決算いくつで上がった業績は耳を揃えてハイこんだけ。このへん課組織の全体像を時間遅れなく正確に把握し、全社的な組織活動に高く貢献できるようコントロールするのが課長さんの役割だという理解で、まずは良いだろう。
 課長一人で何人ぐらいの規模の課組織まで健全に運営できるものなのか、定番マニュアルなんかどこにもないので思い思いに試すところから始めるワケだが、どこも押し並べてかなりハードルの高い統合トライアルが模索されていたものだ。

 実はこのハナシが『大阪都構想にかかる初期コスト』を理解する起点となる。
 要は『いま280万人大阪市というイチ組織』を『数十万人の特別区×4組織』に切り分けるということなので、さっきの統合とはハナシ逆方向で考えよう。
 大阪市議会というイチ議会は消滅し、代わってよっつの特別区の各区議会に分散されることになる。もちろん議会ひとつにつき、場所を用意して維持運営に関わる付帯業務が必要になってくるから、このぶん人員体制や経費については4セット揃えなければならない。それはその通りであり、だから『初期コスト』と『ランニングコスト』を別々にして、これだけの経費はかかりますよと解説されている。
 個人的にはこの必要経費を殊更デメリット呼ばわりしなくて良いんじゃないの?とは思っていて、そもそも『市バスの運転手が年収800万~時に1千万以上、夕方前に仕事を上がる給食のオバちゃんは年収600万』などと言われ、日本中で底抜け痴呆財政のネタ事例として万年笑い者になっていた大阪維新以前の市政コスト、あれって何か『大阪市民のメリット』だったとでも言うのだろうか?

 ちょっと組織単位の規模の話題に戻そう。ムリして課を統合したその後を考える。
 当然、統合されて規模が大きくなった課組織では、ひとつの課としてのカバー業域は広くなり増える訳だから、そこの課長が決裁せねばならない業務案件は純増する。
 これ、トレンディに語るなら『ハンコが欲しいのに課長が席にいない』という事態に陥りやすい組織形態なんだよな。裏返せば、大阪都特別4区は待ち時間1/4となりハンコ問題を起こしにくい。随分仕事がはかどり、住民サービスにその結果が顕れるのでは。

 ハンコは遊びで突いている訳じゃないから、まず在席の瞬間を狙って捕獲した課長に、何の業務のどんな内容の決裁かを説明するところから始まる。そして『自課の業務処置としてOK、問題なし』を判定してもらって、その業務プロセス遂行の証明として課長印が所定の欄に押される。いいよな?
 なおここで『自課の業務処置としてOK、問題なしを課長が判定する』職場規定があってこうなっているはずで、つまりハンコが突かれたからには『課長はその業務内容について知りませんでした』などという現実は存在しないことを確認しておこう。誰も知らないのに課長印だけが入って業務が流れていきました、では仕事が崩壊する。
 課組織のカバー業域が広くなり過ぎると、さしもの課長も生身の人間なんだから、いやターミネーターでもAIでも一人で処理できる情報量の限界を超えると、判断ミスや決裁洩れといった『情報処理の機能不全』を起こしてしまう。課長待遇の中間管理職の人件費が何人ぶんか浮いたからって、業務処理を失敗して組織活動に大損害を出していては、いずれ会社の経営が破綻してオシマイである。

 そんなこんなで、既にオシマイだった大阪府の職員たちに対して『あなた方は破産した会社の社員です』という、当時の橋下大阪府知事の就任挨拶が始まった。
 まあこんな因果として理解しておいて間違いはないんじゃないかな。

 例によって、このほんのささやかな愚痴っぽい独り言の場とはいえ、一応のところ大阪都構想・住民投票への賛否いずれをも焚き付けるような言論は控えておくとしよう。
 特に若年層の現役世代やハタチ前の将来社会人世代の方々には、機能組織の作動特性をよく理解した上で、この『大阪都構想』なる政策をどうさばくのが得策か、バッチリ意思表示をキメていただきたい。
 『あなたが一票を決裁する』と決められているのですぞ。ではグッドラック!
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