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【1226】カーケア熱力学で考える真冬の乗車ルーチン [ビジネス]

 前回の流れでもうちょっと車のハナシを。
 熱力学第二法則により『軸動力なくしては余熱も出ない』と述べた。

 ガソリンが空気中の酸素と結び付いて燃焼反応を起こすことにより『燃料が燃えたぶんの、丸々のエネルギー』が発生する。この燃焼エネルギーから軸動力を取り出すのがガソリンエンジンなのだが、丸々を残さず100%軸動力にすることは不可能なのだ。
 外気温0度の真冬にエンジンをかけて車を動かしたとして、もし燃焼エネルギーが全て軸動力に変換されたなら、エンジン吸気そのままの0度の排気ガスが出て来ないとおかしいってこと…というのは、改めてこうして解説されるとなるほど…と簡単に気付けると思う。そう、全部軸動力は無理なんだよ。

 で、技術的な細かいハナシは抜きにして、だいたいガソリンエンジンの熱効率というのは普通に動かして20パーセント台の中盤から後半あたりが良いところだから、残り7割以上は余熱にしてそこらへんに放散している。この7割の一部を回収し、うまいこと乗員に向けて放熱させるのがガソリンエンジン車の暖房装置だと御理解いただきたい。

 ここで気付いていただきたいのは、ガソリンエンジンという発動機がまずあって、コイツが軸動力の負荷を背負わされて稼働した時、軸動力相応の余熱が発生するという位置関係である。つまり停車していて、せいぜい自車の小型軽量なエンジンの中に仕込まれた必要最低限の回転系の部品たちぐらいしか動かしていない状況では、余熱だって微々たるものなのだ。
 周囲を積雪に塞がれ動けなくなった時、少々空ぶかしをしたところでこの負荷条件は変わらない。だからエンジン稼働を細々とでも継続できることを優先して、空ぶかしなどやめておけと言っている。

 同じ理由で冬季の『暖機運転』という習慣は、実はあんまり効率の良いものではないという話をしておこう。愛車を大切にする方が、自宅駐車場で出発前にエンジンをかけて数分間放置するパターンが多いと思う。
 結論から行くと放置は間違いで、一刻も早く『ゆる~く走行負荷をかけて、そろりそろりながら十分な余熱を発生させ、熱を回してやる』のが、ガソリンを無駄にせずエンジン以外の駆動系も温められる『正しい暖機法』なのだ。水温計の指針が上がり始まるのが見えたら、もう普通に運転して大丈夫である。
 とりあえず冷機状態でいきなり高負荷のかかる運転をしない気遣いは正しいから、是非その心掛けは守って愛車を大切に乗ってあげてください。ポイントは内燃機関の暖気が進む原理をうまく利用することである。

 さて、そこまで車に優しい作動状態を気にしない人にとっての一番の問題は、自分が乗り込んだ直後からの窓曇りというのが一般的だと思う。
 人間の吐き出す水蒸気が冷え切ったガラスに接触してみるみる内面が結露し、条件次第では霜になって凍り付いていくワケだが、この時点で愛車の余熱が十分に足りていない限りは使える熱源がどこにも無く、要はスイッチ操作で機械がナニかしてくれる手段としては、もうどうしようもない。ではどうするか。

 布でガラス内面を拭いて済むのか樹脂へらか何かで削り落とすのか、ともかく前が見えるところまで実力行使で視界を遮る水なり氷なりをかなぐり捨てたら、いち早くそろ~りそろ~りにでも動き出して走行負荷をかけ余熱を発生させ、デフロスタ-送風が窓の内面に叩きつける熱源を確保するのが最も手早い解決策である。

 乗り込んでどうこう以前に窓ガラスの外面、特に前面のウィンドシールドに厚みのある結氷が見られた場合は、さすがに余計な時間短縮は考えない方が身のためかもしれない。まあ手で削れるぶんは削って、内側も含めて前方視界をどうにか確保して、とにかく焦らずノロノロでいいから事故らない範囲で走行負荷をかけて、前が見えなくて動けないならもう諦めて動かずに、なんとか発生させた余熱でまず熱源を確保する。
 『暖機運転』とはただ運転に先立ってエンジンを回しておくのではなく、キホン熱を作って動力系に行き渡らせるだけの負荷をかけながら、正規の運用状態に早々に持ち込んでやるという目的意識が重要なのである。

 あらまあ結構スペースを使っちまったか。まあいいや、愛車はお大事に。
 もっと言うと、自動車に限らずのコトとして、ちょっとした不注意で壊れたり危険な挙動を起こしたりはしづらくなっているけれど、決して世の因果規律から離れて何でもかんでもユーザーの望ましいまんまに現実が変わっている訳ではないので『技術の進歩』を的外れなカタチでアテにされませんよう。
 便利で安価になったからって手荒にしたりせず、できるだけ労わって大事に丁寧に、永く仲良くお付き合いする気持ちを忘れずに。きっといいことあります。保証する。

 …とここまで書いて、なんとも中途半端な分量になってしまった。
 調子も上がらないので、メリークリスマスってことで今回はここまでにしちゃえ。
 何より安全第一、寒い冬の夜に事故なんか起こすと、まずあなた自身は寒空のもと熱源を持って動いていた車を失う。どんだけ辛く厳しいことか。
 そして、それを救助に来なければならない立場の人たちは、わざわざに人が死傷しモノが壊れた現場に出向いて、そこで速やかな処置作業を完遂することを求められる。どんだけ迷惑で面倒なことか。

 どうか皆さま、聖夜の御安全な車輌運行を。平和な夜道にグッドラック!
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