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【1225】真冬の安全、見えない空気の交通整理 [ビジネス]

 今年もあと10日か…って、人間が勝手に暦を設定して、その1年スパンの始点・終点がこの時期になってるだけではあるんだよな。私にとっては10年来体調もすぐれないまま、コロナの無駄で大袈裟な社会抑制騒動がとどめとなり、二年参りその他の儀式的外出は完全に消滅した。
 不調に臥せっての寝正月にまでなるかどうかはともかく、今年『も』この季節なかなかに調子が上がらないので、手近なウンチクってとこで年末年始の交通安全の話題にでもしておこう。

 交通安全といっても『雪氷で滑りやすい』『視界が悪い』『スタッドレスやチェーンの準備を』あたりは世間一般の注意喚起に任せておくとして、ここではもうちょっと面倒くさく折り入ったハナシにする。雪深い地域でもない限り他人事っちゃ他人事なのだが、こと年末年始においては、自宅OKの帰省先OKでもその道中が危なかったりするので、御一読ください。

 結論から先に行こう。立往生に備えて車外雪かき作業の準備をしておかれい。
 まずフルサイズのスコップだ。頑丈なガチンコ土方仕様のものが望ましい。
 そのスコップだけあっても、身体は凍えるわ足元は滑るわ手元はかじかむわ目は開けてられないわ…では宝の持ち腐れに終わってしまう。万一それを使う場面になったら、躊躇せず全部ボロぐちゃにして使い捨てることを前提に、そのレベルの付帯設備をちゃんと用意しておくのがポイントである。
 あと重作業後に車内に戻って身ぎれいにする準備があると便利するはずだが、あんまり凝り過ぎると空振り回数が嵩んでいずれ手薄になり、手薄になったところを致命的な一撃を喰らわされて肝心なとこで逆効果…みたいな展開もあろうから、そこは自己管理で落としどころを決めていただきたい。

 で、忘れないうちに先に書いておくと、何より暗い時間に移動しないことである。
 まず気温は確実に下がるし、運転はもとより全ての物事がやりづらく面倒くさく失敗しがちの紛失しがちになる。とにかく一分一秒でも、がめつく明るい時間に移動を済ませられるよう工夫を尽くしていただきたい。
 たかが温帯気候の冬季だとはいえ、とても軽装では耐えられないような環境の中、愛車の熱源だけを頼りに我が家キャラバンの小舟で移動しているという現実の構図をお確かめください。簡単な対策アイテムで安全代を稼ぎまくっておくのだ。

 では本題。想定するのは立往生だと述べた。
 御存知の通り、横道に逃れようのない幹線道路で先行する交通トラブルに頭を抑えられ、極寒にさらされながら数時間以上の車中待機を強いられる災害モードである。
 特に怖いのは、短時間のうちにみるみる積雪深が嵩むような強い降雪に襲われるパターンであり、こうなると低温で寒いよりも酸欠死するリスクが恐ろしいのだ。

 ガソリンエンジン車は一般的に車体後部の地面近くに排気管が開口していて、通常なら排気ガスはそのまま大気開放で拡散していく訳だが、積雪深が車体の最低地上高を越えてくるとそうはいかない。   
 ぐるりを雪壁に塞がれ行き場を失った排気ガスが、車体下の空間にどんどん溜まるしかなくなるのは解るだろう。この排気ガスが車室内に侵入してくるリスクが急上昇してくるのだ。

 自動車というのは、ドアから乗り込んで四方に窓も開らけているため『個室空間』のイメージが強いのだが、実際は『密室』とは程遠く、あちこちアナだらけのスキマだらけなのである。そうしておかないと雨具や足元から連れ込んだ雨水が抜けないし、そんな排水よりも圧倒的に温冷快適感や窓曇り防止の要件により、自動車の車室というのは常に外気を導入して速やかに排出する構造となっている。
 夜の桟橋に出掛けて行って間違えて海に落ちてしまう事故で、車から脱出できず車内で溺死している例が結構な確率になっていることを思い出していただきたい。車室にそこらの住居並の気密があるくらいなら軽く数分は車体がぷかぷか浮いているはずだから、手も足も出ないまま閉じ込められて沈んでいくだけに終わらないサバイバル事例がもっとたくさんあって良いはずなのだ。
 無駄に始終スカスカ隙間風が素通しされるようなバカ穴が空いている訳ではもちろんないのだが、自動車の車室はキホン常に換気されているものなのだと理解しておこう。空調操作パネルの内気循環スイッチを押すと乗員が酸欠に陥ると思い込んでいる人もいるが、そんなことは絶対にあり得ない。キホン前走車からの排ガス臭防御だ。

 さて雪国にありがちな事故として、特段に気密も考えていないシャッター付き駐車場で、つい車に乗り込んでエンジンをかけてしまい、たまたま建屋周囲に吹き溜まっていた積雪のせいで隙間換気が塞がれており、一酸化炭素中毒なり酸欠なりにやられてしまう事例を見かける。
 自動車を動かすパワーを発生するのがエンジンなのだから、回すとその勢いで空気中の酸素を消費するのだ。2リッターエンジン車が冷機でエンジン始動し毎分1,000回転で回ったとすると、とりあえず細かいこと抜きのドカチン計算にしても、1分あたり1,000リットル=1立方メートルの新鮮空気を吸い込んでは燃焼行程を経て排気ガスにして吐き出すことになる。
 雪の日といわず相当大きめのガレージでも、命が惜しければ閉め切ってエンジンをかけてはならない。

 現代の乗用車はほぼ例外なく後輪のすぐ後ろあたり、普段は後バンパーが上から被っていて見えないが、逆にバンパーを降ろすとそこにA4コピー紙の半分ぐらいはあろうかという面積の換気口が丸出しになる。車種により左右両側に開いているやつと片側だけに開いているやつがいるのだが、とにかく車外への換気口はここにこのレベルの面積で設けるのが一般的だ。…とすると。

 車外から見て積雪深が車体スソに達するあたりの、せいぜい20センチ前後から、排気ガスの車室内侵入は十分に起こり得ることがお解りだろうか。こうなる前に車体の周囲を雪かきして、自車の排気ガスを車体周辺に停留させず放流・拡散し去ると同時に、車室へのあらゆる隙間風を新鮮な周辺外気から連れ込むような換気経路を確保せねばならない。
 風が強くなり吹雪になると自車に直接触れられる以上の距離には離れたくないし、そもそも車外に出るのは危険なので、とにかく走れなくなったら軽くて浅くて自分の腕力でどうにか掻ける時に雪かきしておかないと、今度は何の準備ツールを持っていようが使えなくなる。

 こうして換気経路確保のアイドリング状態を維持できたとして、車体を走らせる動力負荷もかかっていない状態では、熱力学第二法則により絶望的にヒーターの効きが悪くなることを覚悟せねばならない。『軸動力なくしては余熱も出ない』=エンジンの余熱を使うヒーター作動原理の宿命であるため逃げ道の方策は無く、空ぶかしなどやっても気休め未満でガソリンの無駄遣いにしかならないのでやめた方が賢明だ。
 このぐらいまでアタマに置いて、そんな心配のある地域に出かける方は、ツールとマンパワーの両面で万一に備える準備を固めることをお勧めする。

 最後になってしまったが、いわゆるBEV=充電池とモーターのみで動く電気自動車においては、上記の解説は全く当てはまらない。
 積雪による換気の悪化はあるにしても排気ガスが出ないぶんCO中毒や酸欠のリスクは減ると思うが、走行用まで含めたなけなしの車載電源でもって低温環境下で電熱ヒーターをONするからには、決してガソリン車に比べて安心とは言えないだろう。ちゅうか、そういうことになりそうな環境での使用はやめときなさい。

 慎ましやかだろうと賑やかだろうと、年末年始をそのイメージのまま過ごせるのは、無事故安全の道中あってのことと再認識されるがよろしかろう。交通事故は、やっちゃうと死ななくても死ぬほど面倒くさいしカネもかかる。
 ではよく考えて準備万端整えて、幸福な現実を呼ぶ移動計画にグッドラック!
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