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【1183】陽炎に焼かれた想い出キャリーケースの新旧重量比較 [ビジネス]

 いやあ暑い暑い。この夏は人出も戻って賑やかさが一際に感じられる。
 特に最近になって、猛烈な暑さを実感しながら『この感覚って、昔もあったよなあ』と思うことが多くなっている【1080】

 昭和40(1965)年代の気象情報に関わる私の記憶は真夏の最高値で32℃であり、中東や北米の砂漠地帯で40℃に達するような話は、もはやケッペンの気候区分図的に『異なる区域』の、文字通り別世界としての違いだと理解していたものだ。砂漠に動物の白骨が転がる世界、日常生活とかけ離れた夢物語だったのですよ。

 ただ当時『ああ夏だ!暑い暑い!』と感じていた公称32℃は、いま現在『危険な暑さ』とされる公称35℃もしくはそれ以上の体温超えと、もしかして似たようなもんじゃないかと回想するのである。   
 32℃からいつしか33℃のゾロ目をぱらぱら見かけるようになり、程なく35℃もなし崩し的にお馴染みになったような気がするのだが、当時しみじみと気にしていなかったのでよく判らない。
 つまり昔も今もこの暑さに大差はなく、公称値だけがプラス5度ぐらいシフトしたイメージなのだ。やはりというか、この今の私の感覚と同じく『昔ってそんなに暑さ控えめだったんだっけ?』という議論も散見されるようになって、今度は過去の記録値にそこはかとなく昔に見覚えの無い35℃以上が目立ってきたかの印象もあるのだが、思い過ごしだろうか。いやまあ、公称記録の恣意的操作を疑うワケではないのですが。

 さて有難くはあるのだが、どこも外国人観光客の姿が一気に増えたように思う。インバウンド、インバウンドと呪文のように唱えていた頃より増えたんじゃなかろうかね。宿に落ち着いた後の外出と見え、身軽になって観光を楽しんでいる連中も多いが、大きな旅行用キャリーケースをゴロゴロ引きずりながらの姿も負けず劣らず多い。
 ちょっと前、わざわざにエスカレーターの片側を空けさせず、通貫進路を塞いで横に拡がって立ち止まらせようとした謎のキャンペーンがあったが、何だかんだで結局は元に戻ったようだ。
 キホン重いモノを持ったら動くのがタイヘンなので、エスカレーターでは立ち止まりたい。でも急ぐ人がいるのは解るから、急ぐ人が一直線に駆け上がれるよう片方の一列を上下方向に通貫で空けておきましょう。それで良いと思う。

 ひところ強度設計をきちんとやらなかった他国のエスカレーターが、積載負荷に耐え切れず大勢の人を乗せたまま雪崩のようにステップが滑り落ちたりする映像も出回ったものだが、裏返せばアレは強度設計を普通に間違えなければ良いだけのことで、ユーザーの立ち位置から何か必死に危険予知するような事故ではない。
 だいたい静荷重でフル積載=全段に荷物を持った成人2名あたりだろうか、これにマトモな安全率を掛けて強度計算すれば、誰かが勢いよく駆け上がって衝撃負荷を発生させてしまうにしても、駆け上がるぶん連続した幾つかの段に空きがあるんだろうし、それで一気に降伏して壊れたりはしないはずだ。
 エスカレーター搭乗中に握った手を放してしまっての旅行用キャリーケース滑落事故を心配してのことなのであれば、そこに手を打たないと物事は解決しない。言ってしまえばエスカレーター側でどうにかする問題ではないのである。

 この私も過去10年を振り返って、事前に予約していた長距離列車に遅れそうになり、重量級の荷物を肩に掛け両手に握って、上りエスカレーターを全力疾走で駆け上がった経験は複数回ある。とにかく時間内に駆け込めば、青息吐息でも吐きそうでも何時間か確実にシートでくつろげるのだから、逆にそのためには本当にどんなことでもする。
 恐らくはこういう状況で少々中身の詰まった旅行用キャリーケースを連れていたとして、か細い女の子でも落としたりはしないんじゃないだろうか。そりゃ翌日になって身体のあちこちが痛いだとか、ちょっと爪を割っちゃったとかあるかも知れないが、まず荷物は落とさず予約の列車には間違いなく、死んでも駆け込む。

 そもそも遅刻しそうあるいは遅刻してしまっていて、必死でその目的地を目指す時の心境を思い出すことができれば、普通に片側を急ぐ人のために空けて乗ればいいものを、わざとらに意地悪な通せんぼをするかのような乗り方はしたくないと思うのが、自然な感覚のはずである。
 会合の遅刻ぐらいならまだしも、大事な家族に一目会わないと二度目が無い事態になっているとか、身内や仲良しから待ったなしのヘルプ要請が来ているとか、コトの行きがかり次第では我が物顔で横に拡がってステップ幅を占領しているヤツなんか突き飛ばされたり突き落とされたり、そっちのリスクの方が遥かに大きいと考えるのが普通だ。

 何だか『ほおら、みんなエスカレーターって立ち止まって乗るもんなんだよ。駆け上がりたいヤツ駆け下りたいヤツは、先へ行かせないように横に拡がろう。それが安全というモノだ、教えてやれ』とでも言いたげな風潮が感じられ、どこの性格の捻じれた愉快犯がこんなキャンペーンを提唱するのか不思議に思ったものである。
 もしかすると実際にあちこちで、言われた通りステップ幅いっぱいにふんぞり返っていて実力行使された事例が増えてきて、最近はあの意地悪キャンペーンを言い出せなくなってきたのかも知れない。

 階段構造の自動昇降機の宿命として旅行用キャリーケースなど落下物が危ないというのなら、エスカレーターの利用者全員に上からの落下物に気を付けろ、スマホなんぞにかまけてるんじゃねえと指南するのが、どう考えても先である。
 単車のすり抜け危険視キャンペーン【951】や狂乱歩行者優先キャンペーン【1125】もキホン同じことで、『安全』概念の一般性を誰も否定できない・反論できない金科玉条の印籠に読み換えて、だらしないスキル不足の非効率ななりゆき作動状態を、あたかも最適解の手本であるかのように屁理屈後付けで吹聴して、社会の自然な慣習に因縁をつけ破壊的に変えたがるメンタリティが感じられるのだ。

 冒頭の夏の気温公称値のハナシではないが、この奇妙な『新規律提唱隊』みたいな社会層って、私個人的には平成末期から令和の時代つまりここ最近に目立ってきた気がしており、でもやっぱり昔からいたのかなあ…とも記憶を確かめ直す今日この頃である。
 ま、とりあえず暑い暑いと夏らしく観光地が賑わって、でっかい旅行用キャリーケースがお土産で重くなってくれて、みんな落っことさずに楽しい時間を過ごしてくれれば良いんだけどさ。

 我々日本人、特に子供たち若者たちは、この日本社会の『薄らぼんやりと優しい正義を装った性格の悪さ』を気にしておこう。自然発生し便利している慣習や規律意識を、なんだか粘着性の動機で変えたいらしいと見受ける。
 『現実』がそこそこ自然に落ち着いているのに、『議論』で悶着を起こしたいがための『空論』を発明する感じなのだ。

 陰険なバーチャル屁理屈空間なんか捨てて、暑い暑い現実へ飛び出す人間になれ!
 でも身体には十分気を付けて、酷暑を体験する若い頭脳と体力にグッドラック!
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