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【1235】現実から幻までの太陽系クルーズ航路 [ビジネス]

 JAXAの探査機”SLIM”が月面着陸を成功させた。久々の明るいニュースだ。
…と言いたいところだが、どうやら着陸には成功したもののソーラー発電装置が機能していないらしい。着陸後のSLIM発信データが地球に着信しているそうだから、月面に着陸し損なってバラバラにぶっ壊れたワケでは一応なさそうだ…ぐらいなんだよな。
 このところロケット打ち上げも失敗が続いた感があり、そりゃ内情も知らない外野がテキトーな文句も言えないんだが、それにしても近年『ニッポン宇宙開発技術、どうしちゃったの?』的な不調イメージが拭えなかった。
 まあ調子の上がらない時はあるもんだし、大切なのは『焦らないこと』である。

 月までの距離は約38万キロと言われているから、電磁波の毎秒30万キロで通信して1.3秒弱かかる。これはSLIMの身の上に何かあったとして、それを検知するまでに1.3秒、間髪入れずに受け身の制御で対応するにも、その通信が届くまでまた1.3秒かかるということだから、普通に考えて不慮の事故には間に合わない。
 まだ真直ぐ降りたかどうかも確認中なんだっけ。激突や転倒なんかで本格的に壊れてないのだとすると、いつか次に月に行ったヤツにちょいと起こして置き直してもらえたら有難いんだけどねえ。

 もう数年前のことになるが、小惑星『リュウグウ』にタッチダウンした『はやぶさ2』のお話を聞く機会があった。何しろ相手が小惑星なので、最大で地球から3億キロぐらい離れてしまうことになるのだそうだ。
 はやぶさ2のミッションは、カラ傘おばけのようにリュウグウに一本足で着地したのち直ちに離陸し、そのタッチ一撃でリュウグウ表面の物質を採取して持ち帰るというものだった…はずである。私の記憶が間違っていなければ。

 こういうミッション形態の場合、実は早々に『公転軌道上のここでリュウグウと出会おう』と決まっていて、いったん打ち上げたらそこまでの行程はひたすらヒマな宇宙の長旅…というプラン消化の流れではないらしい。
 まずリュウグウの近くまで飛んで行って、寄せて寄せて傍から眺めながら、どこらへんがタッチダウンに良さげか見繕った上で、相対位置を合わせ込んでいって『よしっ、今ここ!』のGO判断で決行するのだという。だから太陽系の地球軌道とリュウグウ軌道の漫画を描いて、地球からどう飛ばしてランデブーに持って行くかの行程は最初に確定しておらず、人間の場当たり都度の判断による手動操縦なのである。
 むしろリュウグウの十数メートル上空だったかから、せえのー!で降下してチョンと突ついて、その一撃の瞬間にサンプル採取して、帰還の準備態勢を改めて整えにかかるまでの一連のパッケージ作業の方が、自律制御による自動運転に頼っていると聞いた。なるほどな~って感じだ。

 地球から約3億キロも離れた日には、はやぶさ2からの現状報告にしても、地球からの操縦信号にしても、秒速30万キロの通信速度で1,000秒つまり20分近くもかかってしまう。
 『ほら、いま見えるリュウグウってこんなんだよ~』と送られてきた画像は20分前のものだし、『よおし、それならこっちに回り込んでやれ』と作戦思考で放った操作が到達するのは、更に20分後のことだ。
 …こっこここれは、ラジコンのように楽しく操縦できるものなのか?
 人間ってなかなか大したもので、こういうタイムマシン式の演算課題に対しても、ちゃんと学習を経て『勘』が働き、こなせるようになるものだとは聞いたのだけれど。

 これ、宇宙空間に『発信』として放った情報が『受信』されるまでの20分間、ただ水面の波紋の三次元版のように進んでいってる過程なんだよな。3億キロも離れると、人間のしょぼい五感でも『幻』の進展速度に追い付けるというワケだ。
 このハナシどなたかライブ演劇のプロフェッショナルの方、イツマ教授の名言に絡めた、観客の度肝を抜く斬新な解釈で、未来のパフォーマンス新領域の開拓に活かしていただけませんかねえ。前衛芸術系アッチの世界のアングラ演劇に終わらないよう、慌てずの焦らずで、アタマの隅っこに置いておいて取り組んでいただけると幸いである。

 さてジャガイモのような小惑星リュウグウの凸凹表面に運任せでタッチしても、真直ぐで十分な耐荷重の面が待っていると期待する方がどうかしているから、確かはやぶさ2から事前に一発撃ってクレーターを作ると共に『ひと皮むいた中身』を露出させ、その中央にタッチしたんじゃなかったっけ。
 あんな岩石然としたカタチの小惑星をあっちからこっちから見立てて、成功率の高そうな接触地点を慎重に決め、いったん決めたら今度はそこに合わせて確実に作業を命中させなければならない。

 まず着地点に作った綺麗なすり鉢状クレーター、コイツを絶対はずさないようマーキングする必要があるので、先にパチンコ玉みたいな金属球を一定数まとめて散弾にして地表に向け撃ち込んで、まずは着地点近傍一帯にパチンコ玉の星座の地上絵を作ったのだそうだ。
 はやぶさ2からフラッシュを焚いてカメラで撮影すれば、このパチンコ玉星座が輝いてくれるので、ときに見えづらくなるクレーターの陰影ではなく、星座の方を基準に、タッチダウンの自律制御が自機vs地表面の相対位置を割り出せる。な~るほどなあ。

 ナマのままではつかみどころのない自然造形=正真正銘のアナログ事象を正確に把握するにあたり、人類文明としての情報処理手法を適用するため、入力vs出力の因果がはっきりしているデジタル通信現象を『効かせる』試みではないかと、私は思うのだ。

 人間は、いや記憶ストレージを絡めた生涯を送る動物くんたち、さらに機械くんも加えて、全ての高度情報体は、ゼロイチ原理のデジタル情報を介して、環境を把握し、世界モデルを構築し、対応を決心し、そこに現実を巻き起こしている=生きている。
 そしていったん『情報』に変換された現実の全ては、ありとあらゆる通信回路に乗って受発信され、拡散され、記録され、複製され、再生される宿命にある。この世の道理なのだ。
 そのための『情報』であり『通信』なのだよ、個体間という渉外フェーズにしても、個体内という生体稼働フェーズにしても。

 え~と月面探査機”SLIM”の話だったっけ、とりあえず月面からの電磁波到達時間1.3秒はとうに過ぎていて、SLIMくんの現状について何か判ってきてはいることだろう。もしかすると『何が起こっているのか判らない』という事実が判るだけの結末なのかも知れないけれど。
 とにかく38万キロ先の月面にまで到達したのなら、地球上みたく大気現象で風化する心配はないのだから、また忘れた頃にサイエンス話題の材料になって欲しいものだ。

 天文学的スケールって、SFなどハナシとして聞いて知ってはいるんだが実感の湧かない『ホントかよ?』の理屈が、冗談みたいな直球でモロ現実に顕れてくるのが面白い。
 こんな大風呂敷をフルサイズ枠にして中身を細かく計算するような課題となると、もう人間ごときの情報処理能力でナニをどう工夫しようが、とても手に負えないデータ量・演算回数となる。答を諦めるのか?

 『人間の尊厳』なんぞにこだわってちゃ先が知れない、未来が見えない。
 好きに議論して結論出して収まればよかろう。私は先へ行く、あとはグッドラック!
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