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【1117】長期在庫1億2千万個入りミカン箱の品質検査 [ビジネス]

 聞き取れない無線指示を『ラジャー(了解)』でスルーしてしまった水島くんが航空学校を脱落。大河内教官コメント『一点集中になりがち』の評価が妥当かどうかは劇中の描写だけでは定かでないが、『航空管制の情報を正確に扱えない』は間違いなく不適格判定の決定的要件だ。

 聞き取れなければ百回聞き直してでも正確に把握すべき…は実は『べき論』であり、待ってくれない現実が次々と取り返しのつかない事態の悪化を招く現場作業において、理由はともあれうまく機能しない通信を早期に切り上げ自責で完結しようとする思考フローは、人間として自然なものだ。
 だが事故を起こさないよう交通整理している航空管制の情報には正確に従わないと、今度は確実に事故を起こす。だからパイロットは普通の人間として自然であってはならず、故に『専門職』なのだと思う。

 …と偉そうな切り出しをしておいていきなり横道によろめくのだが、黄昏時のロサンゼルス空港では次々と着陸してくる飛行機の灯火群が空港への進入路に沿って列を成すのが見えて、とても美しいのだと言う。ちょうどその時間帯に来客を拾いに行く度、よく見かける景色だと聞いた。
 LA空港は北米滞在期間中に結構ゲー吐くほど訪れていた私だが、残念ながらこの景観は一度も見れずじまいで今日を迎えている。ああ悔しい。
 ともあれラッシュアワーの着陸進入路はそういう状態で、恐らく操縦士視点だと自分のひとつ前以上の先まで他機の着陸が目視できる間隔に詰まっているはずであり、この西海岸ハブ空港の管制指示の実態はその時間帯どんなことになっているのだろう…と思いを馳せつつ何度も管制塔の姿を眺めたものだ。一機でも失敗したら大変な混乱になる。

 一方LAやデンバーなど長距離航空路の一大拠点はともかく、フロリダ半島付根の東岸ジャクソンビルから先端近くのフォート・ローダーデールまで飛んだ時などは、もう旅客機というより田舎のバス停から出るマイクロバス、いやタクシーみたいなのどかさであった。ついでなのでこの思い出話もやっとこう。
 フロントで搭乗手続きを済ませ荷物を預け、表示に従って歩いて行くと…あれ?建屋の先端どん詰まりまで来てそれで終わらず、そこから表に出て地面に降り立ってしまった。もちろん滑走路の一端であり、視界にいる飛行機たちと同じ路面に立っている。
 …えーっとお。
 そこから大西洋南国の日差しを浴びつつ少し歩くと、確かに航空会社のカラーリングを大型機相当に施された小さなレシプロ双発機が待っているではないか。胴体の途中が下ヒンジで反転して開くと、室内面の側がタラップになっていて地面に着くというアレである。そこで初めて『あ、もしかしてコイツで行くんだ?』と気が付いた。うわ~映画みたい、黒のアタッシュケース持ってくるんだったよ。
 確か乗員3名を含む8人乗りとかその程度で、客席と仕切られてない操縦席の様子を後ろから存分に観察できたのが嬉しかった。広い北米で需要規模に合わせただけの一例だろうが、定期航空路線だからって大型旅客機ばかりでもないのである。そりゃそうか。

 さらに横道に踏み入るのだが、本当は最初からフロリダ半島の南端マイアミに降りて現地スタッフと落ち合うのが早くて安くてラクだったのだ。しかし私はこの時が初のフロリダ入りで相棒とお互い初対面になる巡り合わせであり、スマホどころかインターネットも普及していない時代ゆえ双方がモノクロFAX感熱紙の画質で顔写真を手に、自分の名前と所属をひけらかしつつ探し合うしかなく、さすがにマイアミの治安下でそれは受難トラブルのリスクになるでしょってことで、わざわざジャクソンビル経由にして先に人の少ない所で合流を済ませたのである。
 後にマイアミシティでは夜に出歩いたり、もちろんマイアミ空港からLAに飛んだりもしたが、中南米と近接するあのあたりは、やはり侮らず勝手を解ってから動くのが転ばぬ先の杖といったところか。とりあえず日本国内では、北海道から沖縄まで飛んでも同じ日本国内として、そこにある大衆の気質や常識まで含めて均質の社会構造が保証されている訳だが、それって『日本列島』という括りあっての成り立ちで自然発生した、かなり恵まれた生活環境事情だと認識しておいた方が良いと思う。

 さて水島学生に話題を戻して、彼は最悪でも『聞き取れませんでした。いま当方は管制指示を理解していません。申し訳ないが当方の独断で着陸を決行します』と一方的に言い切る決断をせねばならなかったはずである。
 相手のいる現実をさばく作業なのに、相手と確実に意思疎通しないまま、しかも相手に『自分は解ってませんよ』とも伝えないまま重保マターのプロセスを単独強行するような人間は、その業域に不要だ。

 というか極めて危険な災害因子としての害悪であり、なるほど本人が自己分析として何をどう自覚していようが『ダメなものはダメ』として判定を下してやらないと、事故が起きてからでは遅い。『いてはいけない人間』である。
 何から何まで指差呼称しながらシラミ潰しに確実を保証する必要はないし、それは現実的でもないけれど、『ハズしちゃいけない管理ポイントをハズさない確認センスで、やるとなったら絶対にハズさない高信頼性モードで実行できる』というところが重保キーマンの能力要件なのではないですかね。
 『コレコレこういう場合にはこう対処する』の定型フローが筋書き通りに成立しない場合、航空管制なる情報センターが交通整理しているのだから、他にどいてもらう調整をそいつに押し付けて怒られながらでも安全確保して帰投するのが最優先であろう。無事故でコトを収めなければ、後始末も改善も叶わない。

 私は航空管制の仕事を知らないが、『事故を起こしてしまったら済まないでは済まない=死んでも失敗できない』重責に直結した意識で実務に携わった人は、事故につながる『現実の展開の原理』に厳格に忠実であり、確実に現状把握して、正確な対応を実行する精神規範が感じられるものだ。
 逆に些細な想定外に出くわして、罵声や悪口などボロい日本語の乱れがこぼれ出たり、遂には大声を出したり物音を立てたり、いわゆる『威嚇』や『泣き落とし』のような場の勢いの領域にコミュニケーション手段が迷い込むような人種は、結局のところ現実をさばけない。
 この手の押しの強さ…というか、こんなもの何の実効パワー強度にもならないので強弱概念の日本語では語りたくないのだが、こんなしょうもない無能低能の面倒くささをもって『あの人は怖い』『あの人には勝てない』みたいな権力の認識が共有されるような組織空間ができてしまっていたなら、一旦そのポンコツ組織は解散のガラガラポンにしないとダメだろう。現実の原理でないものを組織力の基準にしてしまうのだから、マトモな生産性機能を持ち合わせるはずもない。

 逆説的だが、こんな半人前のナメた緩みを叩き直して命に係わる原理順守の緊張感を条件反射の領域に刷り込むため、重保の現場では怒鳴り声が飛び、必要とあらば体罰も駆使して行動規範を叩き込む。叩き込まれたらハイ!と返事をして命令に従う。
 今どきちょっと重労働に見えそうな業態があると『違法、ブラック』と囃し立て、因縁がつけられる隙があると見るや『ハラスメント、コンプライアンス』を叫んで無駄無益なディベートばかり繰り返す痴呆職場が増え過ぎており、そんな茶番に毒されていない新卒人材の側から『ウチの職場がホワイト過ぎて…』と呆れられ退職に到ってしまうケースさえあると聞く。
 なるほどな、独自の意識も生命力も感じられないフヌケのママゴト組織に身を預けて、腐ったミカンと同化してしまう危険に怯えたか。若い人のその判断は正しいよ。

 1億2千万人日本国組織は『民主主義議会制法治国家』『資本主義経済と自由競争市場』『通貨経済および変動相場制』これら数々の社会運営システムの原理を『国家生命に係わる大ゴト』として意識できているのだろうか。

 努力をしても、パイロットになれない学生はいる。
 努力もせず退化して、先進人類になれない黄色いサルもいる。
 舞ちゃんは『努力は報われんねん!』と言っていたが、そもそもその努力からしなければ、パイロットにも先進人類にもなりようがない。私情を捨てて正確に現状認識して、実効努力に汗を流して、報われるかどうかはそこからの問題なのである。
 子供たち若者たち、サルの群れなど置き去りにして進化の道へ、ではグッドラック!
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