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【969】イノベ夢みる業務管理の慢性不眠症 [ビジネス]

 平成ひと桁、製品開発の技術職に就いて4~5年目あたりのことだったと思う。異動していく上司に『お前ら見てると3年後もおんなじコトやっててそうなのが怖いよ』と言われたことを憶えている。
 定番の試験評価パターンで装置動かして、いつもの測定機器から吐き出される数値をいつもの通り処理して、やれどこそこの数値がいくつ未達でどうするんだの日々を送り、あとは毎年恒例の実験標準書の点検・整備・最新化までできてるかをやっつけ仕事で年度末に片付けて、要は自分たちの仕事に目前の現業そのままのイメージしか持てていないところを問題視したコトバであった。

 うっ。そりゃ日常の業務進捗を阻害するような不足・不都合は起こっていないから、仕事は順調にまわっていると言えばその通りだ。だが、それで過ごして3年後か…
 来年ならまだ全く同じことをやっていたとしても大しておかしいとは思わないかも。しかし製品リニューアルを繰り返しライバルと鎬を削る量産市販品のメーカーにとって、3年といえば完全に『時代遅れ』『陳腐化』により後塵を浴びることになる足踏み期間である。
 つまり普通に仕事している限り、我々は3年後には何かぱっと見ていま現在と何かが明らかに違う仕事をしているはずだ。それが自分自身の過ごす現実になっている。そういうことだ。

 ほかっておいて設備も仲間たちも、そこでまわる仕事も、勝手に変わる訳じゃないから…というか実験標準書はこの私が整備しているので、むしろ勝手に変わられちゃ困る立場だったりする。
 ということは、私が3年後を変える作業に直接かかわることには確実になるとして、問題なく進行するこの現行業務の維持と、それをやっていては3年後に起こる競争力喪失の位置関係はどうとらえて、ナニから順にどう手を付けて行かねばならないのか…

 ただ一斉の現状刷新では業務ノウハウの連続性が破綻するだけ、優れた将来解が見つかっても過渡期を工夫して仕事をアナ空けず滑らかに繋げなければならない。今この局面で考える向こう3年先だけのハナシでもなくて、ずっとその先も、もっと先も、この課題は常在し続ける。
 現場の日常業務をまわす標準化の意識も実用そこそこレベル、また市場競争力を維持するための現状否定と進化変革の意識も実用そこそこレベルとして、両立で並以上に保たないと企業活動としては成り立たない訳だ。そうかあ…

 具体的な商品カタログ新製品開発の業域に対して『新技術』や『先行開発』と呼ばれる業域は、結構そのつもりをもって、わざわざに業務課題のネタとして噛みつく新しモノ対象物を決心し、多忙な新製品開発の負荷を敢えて押しのける形で工数を割り込ませ、その時その場ではなかなか明確にならない成果をどうさばいてモノになる部位を取り置くかまで、その一連の全てが本当に難しい。
 なるほどな、やらない訳にはいかないが、狙って命中率が上がるとも思えないしな。

 ときったま『実は世界的に凄い独自技術で有名な町工場なんです』みたいな中小企業で、定時後になると従業員が好き勝手にいろんなことを作業場で試している…みたいな業態が紹介されていたりするのを見るが、やはり思い立った有志の従業員が発想を自由に試せる時間を、日常稼働の生産管理とは別枠として確保しているからこその姿なのだろう。
 これはこれで定時後も仕事してるっちゃ仕事してるんだから、労務管理にかっちりカウントするのが四角四面のスジなのだろうが、でもこんな定時後の個人チャレンジ試行は『ノってる時、ノってない時』で激しく増減するし、そこでの成果物が業績に跳ね返す効果額も未知数だ。こんな稼働形態の、計画の立案も進捗の管理も、到底カタチを成すほどのものではないし、それを無理にやると『管理が目的の管理』に陥ってしまう。
 むしろ仕事をよく理解した好き者の従業員が、業務枠を解かれリラックスした精神状態で、そのアタマと身体でついつい=自然な流れとしてやり始めることを具現化して、『未来の苗』として刈り取る場にしておくべきだということは直感で解る。
 う~ん、中小企業ゆえの労務管理のユルさが従業員の献身を得て、なりゆきでうまくいってるだけってことになるのかなあ…

 待てよ、これってこの中小企業という組織生命体が、その日の稼働を終えて眠りに落ちて、夢を見ている間の時間だと考えられたりはしまいか?
 生きて食うための日常稼働を終えたその身体を休めながら、労働力がオモテ画面の制約から解かれて、ウラ画面で進化の新展開を探っているとは考えられないか?

 だとすると、いわゆるちゃんとした大企業で『新技術』や『先行開発』の業域に対して選任の体制を配置し、業務計画を立てさせ工程表を描かせ、『進んでいる』vs『遅れている』の評価軸をもって進捗管理するというのは、人間ひとりにフラクタル転写して例えると、起きたアタマでどんな夢を見るのか予定を組んで眠り、目覚めて予定通りの内容だったかどうかを検証するようなことになっている。そんな構図になってしまっている可能性を考えねばならないような気がする。
 そりゃ慢性的に心労に押しつぶされる鬱なモヤモヤ仕事のイメージが漂うし、成果も上がんねえだろうよ。そしてこの大企業組織のあるある実情を、再び逆方向で現代人ひとりに反映させるとですな…

 夢というのは『人間の願望が顕れ出て来ることが多い』と広く一般的に認識されている一方で、自然の摂理として真剣にそんな因果になっているとはつゆ知らず、起きて窮屈な思考作業で無理組みした理屈を、無意識のうちに夢に押し込もうとする傾向にハマり込んでいるのではなかろうか。
 その結果は睡眠不足、そしてどうにか眠れている間もカッチカチの理屈が邪魔ばかりして、無限のウラ画面で自由に自然に正しい夢を見ることができない。

 大企業組織の仕事の仕方をどうするかは、いま具体的な改善策を思いつけなくて申し訳ないのだが、上記に述べた解釈を頭の隅に置いておけば、皆さま御自身いつか良いコトを思いつくきっかけになると思う。
 いや、初期の頃によく扱った業務効率向上テーマ【120】の実効解につながりそうな予感が急にして、つい一気にここまで突走ってしまったのだ。
 メチャクチャ中途半端かつ強引にまとめにかかるなら、いま日本社会は自然な願望として、かつての日常生活に戻って普通に暮らしたいと思っているのだから、みんなしっかり眠って気持ちが正規仕様で安定すればするほど、どんどんそっち方向に日本社会は動いていくはずである。
 『政治が思考して決め事をして、国家組織がついて動く』などとする社会文明の理屈ごとき、1億2千万人組織の生命原理にはひとたまりもなく呑み込まれることだろう。

 たかが人間の意識が、思考が、主観が、自分ら個人や組織の自我を動かしている・動かせるとする思い上がりの勘違いはいい加減に改めた方が良い。
 トンネルを抜け出るのは早い者勝ちだ。気合い入れてくつろいで、では御幸運を!
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