SSブログ

【80】数字と結論、どっちが先か? [ビジネス]

 北米モーターショーが開催されている。既に報じられている通り、まずはインドの超低価格車が目を引き、全般的に環境対応の出し物が目立っているようである。
 インドのタタ社が発表した『ナノ』がその低価格車で、日本円にして28万円程度だという。コスト低減のためワイパーとドアミラーは運転席側のみ、エアコンもないとのこと。暑い国だがエアコンなしは正解だと思う。

 車室内から熱を奪うのはいいが、その奪った熱に加えて、エアコンガスを循環させる圧縮機に投じた動力を上乗せした合計が、熱として大気中に放たれる。涼しいのは乗員だけで、総合的に見ると大量に放熱しているのだ。住宅用エアコンも冷蔵庫も基本的には同じである。
 さらにガソリンを燃やしてエンジン軸動力になるエネルギーは30%に満たず、残りはほとんど熱として大気に放出される。真夏の行楽地の渋滞など、まずエアコンをまわして冷房以上に放熱し、さらにエアコンに必要な動力のためその何倍も放熱しているのだ。
 暑い中、おのれの涼感だけのため列をなして焚き火している自覚を持つ者が何人いるだろう。

 ひと頃下火になったように見えたが、最近また電気自動車が勢いを盛り返してきたようだ。
 確かに電気自動車は走行中に排気ガスを出さない。だがどこまで環境に優しいかは、現時点でかなり疑問である。
 火力発電所において、優れた断熱環境で安定した連続燃焼ができるところまでは間違いなく環境に優しい。だがそこで作った電気は貯めたり送ったりしやすいがゆえに、長距離を送電されバッテリーに貯めっぱなしになることも多く、その度に損失が嵩んでいくのである。
 発電所からの送電距離、充電環境や稼動スケジュールによって、電動機械のエネルギー効率は激変するのだ。裏返して言えば、その前提条件をどう設定するかで環境保全効果の数値はどうにでもなる。
 実効性のある環境保全効果を得るためには、必要都度、必要最小限の発電および最短の送電距離を保証するシステムが不可欠であることを忘れてはならないのである。

 今この瞬間、全人類が全ての人工エネルギーの使用を中止したとしても、これまで放った温室効果ガスのために地球温暖化は進行する。二酸化炭素排出の削減目標値の設定でもめたり、排出量売買ビジネスで見込み値だけあっちからこっちへ動かして喜んでいる場合ではない。
 我々人類に必要なのは『私だけは改善できています』という数値や理屈なのではなく、地球全体の現実を妥当に反映する数値や理屈と、本当に改善できている事実の方なのである。

 今年度の業務成果は妥当な数値化で申告され、評価がなされているだろうか。
 プラス成果が過半数あがっていれば会社全体の業績は上向き、プラスマイナスゼロなら前年レベルを踏襲、という相関があるはずなのだが。

 次回の更新は30日水曜日を予定しております。あしからず御了承くださいませ。


nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0