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【1191】終夏のカムカム珈琲研究室 [ビジネス]

 8月もあと一週間となった。毎年のことながら、好きな季節なんだが少し寂しい。
 豪雨災害に遭った地域の方々には申し訳ないが率直な印象として今夏は雨が少なく、何よりも蒸し返すような多湿の日がほとんど記憶に無い。何というか、夕方であろうが深夜であろうが早朝であろうが、もう自分が身を置くその気候の底の底が既に『暑い』というにも許容範囲を大きく超えた状態となり、あ~あ今の季節この時空間のどこにも逃げ場は無いな…とほとほと観念する時期が訪れなかったように思う。

 例年だと立秋つまり盆休み前の8月も中旬にかかろうとする頃、特に夕方の風に涼感が明らかに割り込んできて、夕暮れ夕涼みのビールが美味すぎて泣けてくるのだが、今年は夏を通して夕方の風が優しい。風と空を求めて缶ビール片手に屋外に出たは良いが、凶暴な熱風に押し戻されて退散したことが一度も無かった。
 日中の高温ピーク時間帯がそれなりに派手な数値と体感で連日続いている感じはあったにしても、全体的にはカラッとして熱気と湿度の圧力は随分と軽い印象である。今までのところは、だけどさ。

 さて、起き抜けから『もうナニもかも終わってる出口の無い暑さ』をかき分けずに動き出せるとなると、朝コーヒーを作り置きするのに非常に助かる。短時間で湯を沸かせる電熱ポッドがあるにしても、やはり夏場は高温を扱う作業を少しでも避けたい。
 いわゆる『アイスコーヒー』は、どちらかというと濃いめ苦めに淹れて、その名の通り氷を投入するのがポピュラーな手法だと思うけれど、私は夏の季節にごく普通のホットコーヒーを淹れて常温で冷ましたのちペットボトルに移し替え、冷蔵庫に寝かせる『冷蔵コーヒー』の方を愛用している。
 冷たさで味覚が鈍るのか、そもそもそう感じるものなのか、何となく口当たりが丸っこくて腹にももたれず、マイルドな味わいながら氷が融け出して味が薄まることもないし、自制を効かせないと無限に飲み続けてしまうほど大好きだ。まだステロイド離脱が終わってないので、水分がぶ飲みは控えざるを得ないのがもどかしい。

 大学の研究室時代、部屋の冷蔵庫には近所の豆屋さんの出前から買う煎り豆が絶やさず置かれており、冷蔵庫の上にはドリッパーとサイフォンの二通りの設備が用意されていた。毎月定額だったか、飲むヤツが飲むたびに100円出資していたのかは忘れた。とにかく酒は大学生なら当たり前だとして、我が研究室はみんな揃ってコーヒーも大好きで、始終飲んでいたように思う。
 全く同じコーヒー豆を挽いて、ドリッパーとサイフォンの両方で淹れて飲み比べるという企画もやってみたが、これは殆ど差が判別できなかった。サイフォンの方が若干まろやかな感じはするのだが、並べて飲んで違いを探して、どうにかこの結論に納得するというのが正直なところで、つまり『ちゃんと淹れれば、どっちでも確実に及第点は取れる』というのが私の持論となっている。

 サイフォンはお洒落で面白いんだけど場所を取るのと、専門店のように始終次々と淹れ続けるくらいの稼働率がないと、あの挽き粉を引掛けて止める排水口ネットみたいなやつ、あれの衛生管理が難しいかも知れない。まあ熱湯使うし、使用ペースの都合で生乾きを繰り返したところで腹を壊す心配は無いと思うのだが、せっかくサイフォンで淹れるんなら直感的にも香り完璧であって欲しいではないですか。
 サイフォンの強みは、フラスコ内のお湯が沸いて、自動的にフラスコ内圧でお湯がドリッパー部に噴き上がったのを確認してアルコールランプを退くと、あとは美味いコーヒーがリターンで流れ落ちてきてくれるのを待つだけで済むところにある。そのドラマチックな見た目よりも、手順さえ覚えてしまえばキホン失敗しない作動信頼性の方に実用的なメリットがあると思う。
 ただそれにしても一般家庭だと、手入れの面倒くささやアルコールランプの維持管理など特別な工程が意外なボディブロー負荷になり、心ならずもお蔵入りしてしまう結末が少なくないのではなかろうか。

 …ということで、遥か昔に大学生でもなくなった私は今や完全なドリッパー派である。
 あの下の広がったビーカーみたいなコーヒーサーバーの上に被せる『じょうご』みたいなやつ、とにかく壊れにくくて、できるだけ受け口の容量がたっぷりしているのが良い。私が自宅で愛用しているのは透明プラスチック一体成型のタイプで、1リットル容量のサーバーと併せて使っている。
 濾紙の品質はおろか肝心カナメのコーヒーの挽き粉の銘柄さえ気にしたことはなく、いずれもそこらのスーパーの棚でありもん調達する以上の努力を払った覚えは無い。

 挽き粉は一度開封したら空け口はしっかりと密閉して冷蔵庫に保管するとして、そこから直径3センチ、深さ2センチの円筒形の計量さじできっちり2杯ぶんを投入、ここまでは本当にどうでも良くて、コーヒーの味はここからの淹れ方ひとつで決まる。
 第一に、十分に沸かしたお湯を間髪入れずダイレクトに使うこと。第二に、ドリッパーにどんどんお湯を注ぎ足しながら、高い水位を保ってドリップ中できるだけ、ぐるんぐるんと熱対流を起こさせ続けること。これだけ守れば、まず失敗はしない。
 1リットル作ったらそのまま常温で放置、あとはお茶などの1リットルペットボトルに移し替えれば、冷蔵庫で冷やすにあたり妙な場所の取り方もしない。時間のある時に何本か大量生産して、冷蔵庫にストックしておくとなかなか便利だ。
 設計手法が完璧に確立されているペットボトルの蓋構造、何度しげしげ眺めても、この簡素で安価で軽量な構造をもって、老若男女どこの誰でも普通に手締めすれば百発百中、逆さにして振っても滲みひとつ出て来ないというのは、まったくもって驚異の信頼性なのである。

 因みに、まだ淹れたてで熱いうちにコーヒーをペットボトルに移すのも構わないが、炭酸など冷たい温度でしか飲まない飲料のやつだと熱変形してボコベコになるので要注意。実はペットボトルにも材質の種類に違いがあって、熱いくらい高温領域まであり得るお茶のペットボトルはびくともしない。
 ともかく当然ながら熱いままペットボトルを冷蔵庫に入れるのはやめましょう。傷むものでもないし、まず無駄な電気代をかけずに常温放置で冷めるところまで冷ますのがSDGsというものである。

 以上、この『冷蔵コーヒー』は夏の季節の楽しみとしてオススメなのだが、まだ日が長いのでつい間違えて午後の4時5時に飲んでしまわないよう、くれぐれも御注意されたい。夕方以降のカフェインは夜の睡眠の質を落としてしまうからだ。

 その昔、何かの記念品でフルオートのコーヒーメーカーをもらった。ぱかっと天蓋を開けて、かたや水かたやコーヒーの煎り豆を入れてスイッチONすると、お湯を沸かすと共にミルが豆を粉砕し、これがドリッパー部に落ちてお湯が注がれるという、さすがゴリッパな肩書通りの全自動だ。
 だがそのお点前たるや最悪というにも今もって次点が思いつけないほどの酷さであり、豆を換えたりいろいろ試したのだが不思議なくらい改善代が得られず、すべからく他ではとても再現できないトゲトゲしい苦みと、いつまでも口に残る不快なえぐみがいっぱいの、それはそれで孤高の性能が貴重なコーヒーメーカーであった。…っちゅうか、捨てた記憶は無いから、探せばどっかにまだあると思う。
 内蔵ミルが能力不足の可能性も残るが、恐らくはあちこち樹脂製なので煮沸ヒーターの加熱が甘く、半端なヌルいお湯をちょろちょろセコく注ぐのが失敗の主要因だと見ている。いつか探し当てたら検証してみたい。

 コーヒーを淹れるのがイマイチ得意でなくて悩んでいる方、十分にお湯を沸かして、ちょっとまとまった量を対流ぐるぐるで作ってみてはいかがでしょうか。当たれば儲けもの、初期投資もランニングコストも低く、ずっと楽しめてオススメである。
 残暑を中から冷まして、アタマすっきりのIQ実効コーヒータイムにグッドラック!
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