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【1119】歪めた過去で戦争煽る劣化フィクション日本史 [ビジネス]

 またしてもの飛行機ネタ、しかもNHKってとこまで共通してるんだが…
 先月ミグ25について特集番組をやっていたので、もちろん視聴した。こっちで積み置きトピックにしたままグズグズしてたら先を越されちゃったよ【694】

 結論から行こう。その内容だが私のフェイク判定は完全クロ、落第である。
 『ソ連から襲撃される脅威に日本がさらされた』などと、当時のイメージとは遠くかけ離れた表現で、まるで今日の日本社会に戦争の切迫感をでっちあげて煽ろうとするかのような世論操作が感じられたからだ。こんなもの今さら『戦争こわい、侵略こわい』の引き合いに出すなんて想像もしなかったよ、あほらしい。

 時は1976年9月6日、函館空港にいきなり一機の戦闘機が強行着陸してきた。その機体こそ、当時にして東側の最高軍事機密とされていたソビエト連邦の『マッハ3の超高速戦闘機』ミグ25である。
 私はまだ11歳だったが、子供向けの飛行機図鑑にも『世界を代表するジェット戦闘機』として、側面図・推定性能ともどもミグ25がしっかりラインアップされていたのを覚えている。『最高機密のマッハ3』とはどういうことなのか?

 御存知の通り1960~70年代当時は『米ソ冷戦時代』と呼ばれる。ソビエト連邦vsアメリカ合衆国、この東西二大国かつ共産主義社会主義と民主主義資本主義の二大文明が、表向きには直接に武力衝突しない構図を維持しながら、実質的なトコロでどっちが強いか火花バチバチ対峙で世界の軍事覇権を争っていた。
 現実ガチンコにドンパチやっちゃうと、確かにどえらい水爆なんかが実在していたので、コトの行きがかり次第では世界史に切れ目ができるほどタイヘンなことになっていた可能性はある。米ソ双方に『自分らが本気の戦争モードになったら全世界的にヤバい』という自覚があったんでしょうな。

 …で、朝鮮半島だベトナムだと、他国の内紛の後ろ盾を分けるカタチで最新兵器を投入したり、相手方の本土撃滅を想定させる爆弾やミサイルなど、これ見よがしの圧倒的破壊力の実験をデモ競争したりしていた。米キャッスル作戦もソ連ツァーリ・ボンバも、まさにその象徴的な例だ【419】【420】
 そんななか超・高々度をマッハ3で飛ぶ米SR-71偵察機は別格の敵地侵攻手段であり【426】、東側はこのSR-71に飛ばれると『対抗手段ナシ』の立場に陥ったのである。軍事衛星も無い時代、モロに自国陣地の上空を通過しながら軍事施設を直接撮影されるというのは、かなり決定的な劣勢確定のシンボリック証左であった。

 このSR-71に対抗する切り札とされたのがミグ25戦闘機である。
 基本設計の時期としては今日も航空自衛隊に配備されているF-15イーグルと大差ないため、双発エンジンの双垂直尾翼に、胴体両脇の吸気口形状、胴体後端のジェット噴射ノズルなど、設計思想に共通点が感じられる姿である。ただ極限まで『最高速度イノチ』の設計思想が追求されたと見え、エンジンの吸・排気口はF-15より明らかにひとまわり大きい。
 要はソ連は『SR-71が飛来したら、ミグ25が追いついて迎撃する』というロジックを、国際軍事世論に成立させねばならなかったのだ。実際、恐らくは意図的に西側固定設置レーダーに捕捉されながら、対地速度マッハ3以上で飛んだデータが残されている。もちろん西側としては『マッハ3を出せる東側戦闘機』の存在に、それなりの警戒感であたることになる訳だ。

 実は数ある軍用機の中でも『戦闘機』のカテゴリーに分類される機種は、究極的な最高速度の性能ニーズがそこまで高くなかったりする。ここ一番で速いに越したことは無いんだが、何しろ速くなればなるほど高速対応の面倒ゴトが信じられない勢いで積み上がり【426】、ちょびっと速くするためだけに死ぬほど特殊な高額装備が満載、本来の戦闘力さえまともに持てないかも…というのが実情なのだ。
 F-15イーグルなんかはマッハ2.5で世界最速級だが、その高速のため最小限の火力を機体内蔵にして搭載している。領空侵犯してきた不審機を見つけてスクランブル発進して国境線まで駆けつけ、万一の場合は最低限の武力行使で不審機の作戦行動を抑止するまで。そんな目的によく適合する優秀な『制空戦闘機』である。
 強力な大小ミサイル群や長距離を飛ぶための増槽燃料タンクなんかを翼下に鈴なりにぶら下げてマッハ2.5だ3だはあり得ない。もちろんミグ25も全身ハリネズミ武装という姿はあんまり見せたことが無い。それにしてもSR-71が偵察に徹し、艱難辛苦を乗り越えて実用化している熱対策なんか一体どうしているのか、そこが西側技術者の興味の的だったのである。

 そんななかソ連軍のベレンコ中尉が北米への亡命を思い立って、ある日ミグ25に搭乗したまま自国ソ連の基地へと帰還せず、日ソの国境を越え函館空港に強行着陸した。
 『亡命』とは、早いハナシ自分の国を見限り他国の国民になることを決意して、自国を脱出し他国に転がり込むことを言う。少なくとも当時の国際規約において、どこか他国から亡命の意思表示をする人間が転がり込んだら、ともかく一旦はそれを認めて保護してやる規則になっていると聞いたものだ。

 地上設置の対空レーダーは低空飛行する飛行機の捕捉が苦手である。やはり山や建造物など余計な対象物との区別が難しいし、そもそもそれらが障害物としてレーダー波の遠達を阻むからだ。
 最高軍事機密のミグ25を勝手に乗り逃げして西側と同盟関係にある日本国を目指すのがバレたら、確かにソ連軍当局はベレンコ機の撃墜も辞さなかったと思われ、だからベレンコ中尉はできる限りの低空飛行で大陸から海を越え函館空港に飛来したのである。
 大気の濃密な低空でジェット機の燃費は極端に悪化するため、函館空港に着陸した時点で燃料の残量は結構なギリだったと言われる。ともあれ、こうして無傷のミグ25が日本の函館空港に着陸した。

 さて今回の本題はここからだ。
 ソビエト連邦は最高軍事機密たるミグ25を見ず調べずの手付けずで返還するよう、実にあの手この手の交渉を日本に仕掛けてきたという。当時、武力行使による強奪なんぞ許されない国際世風があったし、西側から見れば謎の多かった東側技術がその実質的な実力劣勢を自覚していたのだとすると、亡命で日本の手に落ちた最新兵器ひとつのために決して手荒なマネはできなかったと考えるのが妥当だろう。
 それにしても、よっぽど何とかしたかったようで、確か航空母艦から発艦を失敗して海に落ちた米軍F-14トムキャット戦闘機をソ連が回収しているので、交換しないかという話まで持ち掛けてきていたはずである。ここに『つけ入れば日米の同盟関係は流動的である』とする展開に賭けてくるソ連の戦略思考も見て取れて非常に興味深い。
 なるほどF-14は北米軍用機技術の粋を集めた機密のカタマリだが、とりあえず日米安保が公衆の面前で成立した関係にあるのに、そんなもん日本国がもらっておいてミグ25をみすみす手放せるはずもない。だが、そうまでしてソ連軍はミグ25の軍事機密を守りたかったのだ。当時の米ソ冷戦や日米安保の思惑が見え隠れした一件であった。

 結局ミグ25当該機体は函館空港で分解され、西側機関で詳細を分析調査された。
 『ガチでマッハ3は出せる。だが時限タイマー付きの必殺技で、しかもマッハ3出した機体は熱害で再使用できなくなる』というのが結論であった。
 SR-71対抗策として公認マッハ3を実現するためだけに開発されたような戦闘機、として過言ではないのだ。さらに鉄錆が確認されたり、チタン合金どころか汎用金属のニッケルもあちこち使われていたりして『なあんだ、脅かしやがって』と多少見下したような空気が漂っていたのも事実である。
 いっぽう超・特殊でもないそこそこの汎用技術の範囲内で、限定的にでもマッハ3を実現する骨太の実用性保証コンセプトには高い評価も集まっていた。

 これをNHKがドキュメンタリー仕立てで『ミグ25奪還をもくろむソ連が自衛隊と一触即発だった』とか『自衛隊員はゲリラ戦での命の危険を覚悟した』とか、まるでソ連急襲による日ソ開戦が水面下で人知れず直近まで迫っていたかのような、アタマのおかしい戦争脅威喧伝コンテンツに組んで流していたのだから呆れ果てたのである。
 北米から『ある有力な情報が入った』だの、ソ連軍が攻撃してくる『可能性がある』だの、完全架空のウソ作話にならないつもりの言い訳のところだけMC日本語が整えてあり、そこからハナシを拡げるカタチがあからさまだったのが実に悪質だと感じられた。

 …ってとこで今回も良い分量になっちまった、とりあえず当時を知る視聴者にとっては、この程度のコト百も承知の茶番フェイク再現ドラマでしかなかったと肝に銘じておけ!と括っておく。現場制作陣に、こんな世論操作を仕掛けるような強制力が効いてるってことだな。
 自衛隊にしても、どこの誰がどんだけ怖いと『指揮命令の絶対性』を口実に、ああいう国家危機管理のイメージ広報がしれっとできるもんなのか、尊敬と信頼を寄せるイチ国民としては困惑せざるを得ない。

 すっかりテレビなんか観なくなった今、受信料払って朝ドラは楽しく観れているNHKなのに、こんな質の情報を垂れ流してもらっては困るのである。これじゃ支払い拒否が続出するのも道理としか言いようがないぞ、しっかりしろ!
 子供たち若者たち、よく見ときな。バカな黄色いサルはこうして戦争を起こす。
 反戦を叫ぶなら、正確に学んで正しく叫ぼう。とりあえず明朝もグッドラック!
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