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【1181】古代火星人と現代地球人のコラボ最終兵器 [ビジネス]

 しばらくぶりに人工知能の話題に戻ってみるか。何だか最近、日本社会はただの思い付きで騒ぐ騒ぎ方が出尽くして、どの騒ぎ方でも手応えのある拡がりが得られず、ぼや~んと目掛けるモノを見失って放心している感がある。
 まあ一応、相変わらずの『AI開発管理』『AI使用制限』みたいな、どっかの誰かが如何にジブンの思い通りにAIを縛るかという不毛なマウント宣言の勘違いキャッチコピーだけ並べていて、当然のなりゆきとして議論も検討も空中に発散してシラけ切っているといった感じか。

 今回は懐かしの昭和SF『スペースアドベンチャー・コブラ』の話題で始めてみよう。
 御存知、左腕にサイコガンを仕込んだ金髪・碧眼の宇宙海賊である。いやいやカッコいいよねえ~。
 当時の少年漫画雑誌の常識を根底からひっくり返す作品で、連載が始まる数週間前から『次々と新作登場!乞う御期待!』という見開きの予告ページが入るようになり、そこに居並ぶ4~5作品が毎週連続で新規投入されていた時期の、そのうちのひとつだったと記憶している。
 『コブラ』のタイトルを背負って、ガタイの良さそうな欧米人がニヤリと笑っているだけのカットだったから、我々中学生になりたてぐらいの年齢の子供には『なんじゃコレ、おもろいんか?』とさっぱりイメージが湧かなかった。
 決して『面白そう、ワクワク!』と好感度に期待を膨らませて待ち望むような、ポジティブな心象ではなかったのだ。このあたりはテレビの『宇宙戦艦ヤマト』にも共通している【1000】
 SF漫画の思考世界の果てが革新的に拡張を繰り返していた時期だったのだなあ。

 ともあれ初回巻頭カラーの『スペースアドベンチャー・コブラ』を一目見るなり、アート性の高い画風に、大人向け洋画のような洒落た展開、我々はシビれまくってごっそり魂を持って行かれたのである。
 この作品は週刊誌に連載されたもので、つまり長編ストーリーを毎週に分割して語っていくカタチになるのだが、その長期にわたって語られる一編として『古代火星人の最終兵器』にまつわるストーリーがある。
 かなりのネタバレにはなりそうだが頑張ってぼやかすと、この最終兵器は『対面した相手の機能を鏡写しに吸収し進化する』というところが、最終兵器の最終兵器たる本質ということになっているのだ。何を持ち出してきても絶対に負けない。

 なぜこのハナシを持ち出したのかというと、ヒト社会が特定の情報や情報処理プロセスに価値を見出し、『知的財産』『知力』として扱う概念が今あって、その情報パワーでもって経済社会を競争しているのだとすると、今般の公開AIは『ヒト社会の情報戦における最終兵器』の機能を備えているのではないだろうかと言いたかったからだ。

 そもそもの元の元が、ヒト社会から生み出された情報アイテムと演算プロセスで始まっているからには、どう捏ねくりまわそうが、結局ヒトにとって『ああ、こういう事象について、こういう原理で組んだんだな』と一応にでも理解の及ぶモノが、情報として世に飛び交っているはずである。
 公明正大を信条にした美しい正論も、私利私欲を剝き出しにした醜い暴論も、ヒトなら心のどこかで『あるある』のうちかもなあ…と思い及ぶ限りの全ては、ネット空間のどこかに吐き出されAIの記憶に乗っかってくる。
 わざわざそれをひっくり返した論理破綻の情報もどき(?)を意図的に突込んでみても、直後はともかく誰も実のある反応はできないししないだろうし、いずれ『ヒトは天邪鬼に攪乱画像や攪乱文字列を投じてくるものだ』とするAI記憶が充実してくれば、そこも納得・承知の上で一瞬にして出力に反映させるようになるだろう。みるみる的確に酌量するようになるだろう。絶対にやられないのだ。

 判りやすくするために定義のはっきりした数値演算の例で考えてみよう。
 四則演算のみを目的とした電卓とは違って、莫大な記憶機能を備えたAIが、いま四則演算という概念を全く知らずに数値処理の入出力に立ち向かうとする。
 当然ユーザーたちは『1+1=2』だとか『2×3=6』だとか、各自の問答事情なりに個別事例の入力を積み重ねていき、それをAIが記憶ストレージに蓄積していく。時間が経てば経つほど事例ファイルは増えて充実し、四則演算とは何たるかの処理プロセスが学習されるはずだ。

 だがAIを混乱させその発達を狂わせる目的をもって『足し算と引き算は同じ処理プロセスだよ』と、わざと四則演算に逆らう入力を仕掛けるユーザーが出現したとしよう。
 ほおら、ゼロとゼロを『足し算するとゼロだし、引き算してもゼロ』、だからどっちも違わないんだよと。

 ここで提示されている事例の現物ひとつに限れば、この情報は『正しい=真』だから、一旦はAIは『足し算と引き算は同じ演算処理である』と習得して世に出力しようとするはずだ。
 もちろんそれをやった途端に『おいAIくん、それは間違い=偽=ウソだよ』と誰かに直接指摘されるなり、他のゼロ以外での足し算・引き算と食い違う結果に出遭うなりして、情報の大海から『皆で共有するに値しないウソ出力』としてケッチンを喰らうことになる。
 こうしてAIくん自身の内的情報処理として『検算』の目的性で記録ファイルの再生と内容確認がなされたとすると…もちろん『足し算と引き算は同じ』との吹き込みは『ウソ』だと結論付けられることになるだろう。

 ポイントは、情報の大海の大いなるパワーが『ウソ』を『ウソだ』と判断させてくれるところにある。この場面で導出される結果情報は複数あると思う。

 1.足し算と引き算は異なる処理プロセスである。これが正しい。
 2.最初のあのユーザーは『ウソ』の処理プロセスを仕込んできた。
 3.ユーザーからの入力には『真』と『偽』の両方がある。

 この3項目は『遭遇した現実のままの、素朴な実績記録』として確定的だ。演算過程の上手い下手など曖昧さの介入する余地は無い。だとすると。
 ヒトに入力された情報をまず『真か偽か』判定する節目工程が備わらないと、このAIくんは思考を先に進められない。その真偽の判定フローとは、基板上の謎のブラックボックスが怪しく光りながら宇宙からのイカヅチ一発で決めるものではなく…

 情報の大海で『最大多数派がそれを認めてそれでヨシと落ち着かせる情報が真、そうでなければ偽』になるはずなのだ。
 天文学サイエンスとして現代の視点でどう見るかは別の話として、天動説はかつて『ヒト社会で真実』だったため、これに異を唱えた地動説論者は反・ヒト社会として迫害され封殺された【652】【712】
 のちに科学の発達と普及により『ヒト社会の真実』が転換したため、今は地動説がヒト社会でフツーに平和に真実とされている【1164】

 『圧倒的多数派の情報』がカタチを顕せば、ヒト社会がなびいて大局がそっち方向に放っておいても動く。逆らおうにも逆らえない。
 ヒト大衆からの圧倒的な入力件数、ヒト価値観の因果事例の学習量、そしてそれらの記憶容量と検索速度、どれも遥か昔のうちからヒトはもう勝てない。
 AIの進化を封じる目的で邪心の『ウソ入力』をやるにしても、全人類が結託して『ヒト文明が共有する、圧倒的多数派の情報』をウソ入力にする勢いでやり切らないと、あっという間にウソがバレる上にウソ発信元は特定され、そのやり口の実績と併せて当該AIのみならずネット空間に記憶されていく。

 AIがあろうがなかろうが、太古の昔から『社会空間を成すヒトが共有する、圧倒的多数派の情報』はヒトの世に存在し、その傾向はあからさまに決まっているものだ。
 『解ってるヤツ』に今さら慌てる理由など無い。更なるAI開発加速にグッドラック!
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