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【1165】熱血急造組織の凋落時代劇 [ビジネス]

 長いことNHK朝ドラの話をしていないのだが、今クールの『らんまん』も引き続きちゃんと観ている。なかなか面白いと思う。
 熱中するというほどではないが、他の森羅万象・よろず関心事と等しく、私は植物にもそれなりに興味は持っている。草木の緑がある景色は大好きだし、手間のかからないやつをちょっと手元に置いてみようとトライしたこともあるのだが、何故か植物との相性が絶望的に良くなくて、とにかく私の手に落ちた植物たちは確実に枯れる【481】

 今どきオリジナルの世の光景の、面影だけでも見覚えている日本人が絶滅しているからなんだろうが、昨今の時代劇は時代相応の雰囲気がすっかり消え去っていて、登場人物たちが次の瞬間ふところからスマホを取り出して話し始めても、違和感なく気付かずに観続けてしまいそうな絵になっている【1044】
 まあ我々昭和世代の記憶にある時代劇映像を忠実に継承したところで、貧乏くさいし暗いし不衛生っぽいし、そもそもからエンタメ作品にならないかな。和式の着物を脱ぎ捨ててそのままファッションショーに飛び入りできそうな、今風の洗練された顔立ちと体形の役者さんたちが大勢いるから、少々身なりを粗末に崩させて廃屋みたいなセットで立ち回らせたところで、かつての枯れた時代劇の寒々しい空気にはならないか。

 細かいところは機会を作ってまた改めて掘り下げるとして、この『らんまん』は現代オオヤケ社会の仕組みが日本に未整備だった時代に、社会層別にどんな生活慣習で人々が暮らしていたのかを伝えようとする姿勢が感じられる。
 そんな中、恐らくLGBT権利議論の追い焚きで火勢が強まった、昨今の男女の権利意識が反映されたものとも見えるのだが、酒蔵が『オンナは汚い』が故に女人禁制とされていた業界文化を語るシーンが出てきた。
 酒蔵の娘として育ち、早期に酒造りのセンスにも経営マインドにも光るものを垣間見せていたアヤ姉さまなのに、どうしても酒蔵に入れてもらえない。ついつい少し踏み込んだら見つかってこっぴどく叱られ、杜氏たちが厄払いの儀式で酒蔵を除染する始末である。
 劇中ではこれ以上のストーリー展開が無かったため、いわゆる『男尊女卑』の慣習がまかり通っていた時代って、いかに酷くて女性の才能を活用する遥か手前で無碍にして取り合わなかったもんなんだかねえ…と、そういう印象が残る場面だったと思う。
 コレ意外と広く普及していた概念のようで、例えば一般家庭の日常生活においても『オンナは汚いから、入浴はオトコから先に済ませる』とする慣習など珍しいものではなく、私自身が高度経済成長期でも時々耳にした記憶がある。

 日本酒が米の発酵過程に使う微生物つまり『麹(こうじ)』は、虫キングならぬ微生物キングのバトルフィールドでは戦闘力レベルが随分と下の方で、他の雑菌が紛れ込むと負けて喰われて滅んでしまうケースが多いのだそうだ。もちろん酒造りの仕込み作業が水泡に帰すことになるワケで、現代でも酒造に関わる職人さんたちは納豆を食べないどころか、近寄りもしない。酒造りに関わる身として、自分のウチソト両面くまなく雑菌を遠ざける管理意識が徹底されていると感じる。
 便利で高機能な生理用品もなかった時代、女性はどうしても自分の身に衛生的なコンプレックスを背負いがちな精神土壌が自然発生しており、どこまで本当にオンナの身の周り事情が酒造りの支障となって損害を出したのかはともかく、現場の堅い経験則として『オンナは汚いから酒蔵には入るな』と規則化された可能性は十分にあるはずで、そのあたりまで視聴者に考えさせる内容をいずれ期待したい。

 タイトル通り、卑しくいやらしい世間ずれと別世界で育った無縁なワカが、天真爛漫に知的好奇心の赴くまま、いろんな社会層を飛び越えて、自分の興味を現実に昇華していくところがメインテーマのひとつになっていると見受ける。
 人間は放っておくと自己保存のDNA稼働として、
 『誰にくっついとけば=言う通りにすれば、安心して過ごせそうか』
 『安心して=ラクチンに過ごすには寄らば大樹の陰なんだが、その大樹は誰か』
みたいな、なんとも他力本願っぽい思考展開の下心的動機が避けられない。ただこれをそのまま原始的に奔走させると、サル山組織原理に基づいてサル山組織構造ができあがるだけなんだよな。

 『誰の言う通りにすればラクチンか』のDNA、前回述べた通りこれは文系人種の『正しさ』であり、こんなもの人間の場当たり気分でどうにでも変わってしまう。
 『誰』も『ラクチンに感じるジブン』も所詮は人間個人であり、体調や心境であらゆる価値基準も思考フローも激しく変動する。
 これが原因で起こる失敗に対策するため、複数の人間で一定の判断基準をなりゆき共有したのが『慣習』であり、さらに精神環境の急変にさえも惑わされないよう文章化して、物理的に維持管理したのが『法律』とする考え方が成立するのではないだろうか。
 『慣習』も『法律』も、気紛れなヒトDNA行動コマンドがおかしな事故を起こさないよう『ヒトDNA特性を社会運用に適合させるにあたり最適解はこれだ』と時間をかけて理知性を尽くし皆で判断して、『組織として共有し』『組織として記憶する』という目的を持った『情報ツール』であることを再確認しておこう。
 ただ『情報ツール』なんだから、せっかく持っていても意図的に使わずに、理知的でない状態をそのまま放置する選択肢もあり得てしまう。人工知能ならこんなベタでポンコツな実行エラーは無いんだけどね。

 朝ドラ『らんまん』は、まだまだ国家知財としての自然科学も手付かずで、法律そのものもその運用も未発達だった日本社会において、良くも悪くも剪定されずに伸び放題で来たワカが、気の利く敏腕の相棒タケオくんのサポートを得ながら、社会組織枠の構造強度に支えられたり笠に着たりで生きている俗物ヒト社会と巻き起こす相互作用が、テーマとして意図的に見えやすく描かれていると思う。
 この時代、近代国家としての日本国組織の構造が一夜漬けの突貫習得で作り上げられている最中みたいなもので、やたら強権的だったりアラが目立ったりもする公的組織の方も、てんやわんやの試行錯誤で成長過程…いや形成過程の真っただ中だったのだ。

 国際社会において、弱小国として欧米列強に好き放題に利用されることのないように、国家として知識をつけ機能を備え強国の格式を整えるため、優秀者の特命チームを結成して、日本は寝る暇も惜しんで近代国家の構築に明け暮れた。
 ここがあまりに急だったために、前時代式の文系的な『正しさ』の精神文化が、社会組織の基礎にこびりついて残ったのは間違いない。だが当初は手探り状態の大騒ぎだったにせよ『他国の食い物にはされるまい、強く賢い国になってわたり合いたい』と明確な国政の課題めがけて一直線に走って、走れて、曲がりなりにも先進国の仲間入りまで叶ったのである【429】
 そんな生い立ちの日本国運営機能はいつの間にか当時の課題意識をすっかり失い、今日においては、経済を始め現存の文明社会システムを軒並み崩壊に追いやり、将来の日本国の国家像が描けないくらいにまで底知らずに日本国を弱体化させて、それでもまだ反省も改心もしない。

 国民を一度に10人も死なせた国政の、どこに危険予測の見落としがあったのか?
 『正しくないと死ぬ』と言った。正しくなかったから死んだ。
 どこが正しくなくて、では、どこをどう正しくするのか。もう死ななくなるのか。
 1億2千万人で共有する国政なら、1億2千万人で再発防止の協力体制を組むのだ。

 続報を待つにあたり責任筋に無理な切迫感を煽って、早く開放されたい一心の不正やミスを呼び起こしてしまってはどうしようもない。宮古島から回収されたヘリコプター事故機は、フライトレコーダーが機能喪失せずに残っているようだから、とにかく当該業務を熟知し、能力と責任を背負って組織を駆動している実力者の第一声を待とうか。
 台風2号も来ちゃいそうだし、二次災害阻止の厳しい決断が必要かも知れない。
 くくれる腹は迷わずしっかりくくって、残作業も安全第一で無事故の御幸運を!
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