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【594】平和な箝口令ファミリーの愛情醸造期間 [ビジネス]

 前回のビール・ゲームの話題を続ける。
 今はメモ用紙で受注数を受け取り、発注数を決めて次に渡すだけだが、もちろん現実の経済は違う。自分が小売なり卸売なり工場なり、その立場の商売で暮らしていたとして成立性を考えてみよう。

 小売も卸売も自前で持てる倉庫の大きさには限度があるし、冷暗所保存など保管条件の維持だってタダではない。もちろんビールの長期在庫品をわざわざ欲しいと思う購入客なんかいないから、在庫は最小限が原則である。
 もうちょっと突込んだハナシをするなら、一時的なピーク在庫量めがけて大規模高経費の保管設備を持ってしまうと閑散期に無駄な税金や光熱費が出て行ってしまうため、保管設備はミニマム設定として商品のやりくりで何とかするのが割と一般的である。こういった恒常的に発生する財務負担のことを『固定費』と呼ぶ。
 その反面、街の酒屋となると地元のお得意さんが売上の大部分を支える上客となるから、自分ちの都合で発注数に足りない納品ばかりを繰り返す訳にもいかない。

 もちろん生産工場にも同じ制約はある訳で、例えばどこか工場見学に行った時の記憶を呼び起こして欲しい。『ほい、来週から2割増で生産たのむよ』と言われてふたつ返事で応え、その通りラインスピードがプラス2割にひょいと上がって、品質そのままにすんなり増産できると思うかね?
 逆にピーク生産量に合わせた想定で大量生産ラインを組んだとして、通常時は稼働率を落として運転したりすると、全てが秒単位で赤字を積んでいくことだろう。

 これが理解できたら、小売、卸売、工場の役に付き、思い付ける範囲で構わないから現実のお商売の切り盛りを想定し経営方針を立て、もう一度ゲームをやってみて欲しい。学校なんかだと、小売店や卸売業者、生産工場を各々チーム体制の配役にし、受注からの数量検討に制限時間を決めてゲームを進めるのも面白いだろう。
 各チーム途中経過の記録を残しておき、ゲームのあと全員で
  『5ケース刻みで増えてきた25ケース発注に、20ケースで応えてどうするんじゃ?』
  『うるへい!ウチは30ケース以上の在庫は持たん主義で商売やってんだい!』
みたいなユル系レビュー討論をやって遊ぼう。
 ともあれ最初は3人で深く考えずカンタンお手軽にやって、まずは余裕綽々でスムーズにゲームの結果まで得てしまうのがコツである。いきなり凝り過ぎると、何だかよくわからないまま面倒臭くなり、興味が萎えてきて発散したりする。
 うまく自分を、自分たちをコントロールしよう。これも勉強だ。

 さて前回の後半で触れた私のオリジナル案、プライマリーバランスと通貨流通量の制限を緩めた場合の再現ももちろん試してみていただきたいが、当然ながらビール出荷数つまり市場に出る通貨量はメチャクチャに膨れ上がる。
 日本社会にある有価物件のブツ総量はそのままに通貨量だけ激増するから、価値交換の現場において有価物件1件あたりの対価に釣り合わされる通貨も激増する計算となる。そう、『物価が上がる』操作となる訳だ。
 実際は失敗に終わったが、これをもって『ほーら、物価が上がったということは景気が良くなったということだ。みんな商売が繁盛して余裕がある証拠なんだから、消費税率を上げて良いんだよな』、これがちょっと前までのダメノミクスが主張する理屈だった。お解りかな?
 ここで『バーイ、マーイ、ダメノミクス!』と叫べば、その愚かさとカラッポ加減が体感できる。

 大人の読者さんの御家庭では、このゲームに続けて試していただきたい遊びがある。
 だらだらの巨額に溢れ返った市場通貨額メモをごっそり掻き集めて、一番下のお子さんでもお孫さんでも結構だ、『ハイ、これ全部オマエの借金ね』とまとめてドサッと押し付け一旦はゲーム終了。家族一同は逃げるように思い思いの自分の居場所に散って行くのだ。
 その借金請負人が児童以下の年齢だった場合、かなりの確率で泣き出すと思うが、こんなところで手を緩めるようなヌルいことではいけない。

  『お母さん、こんなの嫌だよ』 『いや、お母さんのせいじゃないから。知~らない♪』
  『お父さん、お願い助けて』 『ああ、まあ大きくなって子供に同じことをすればいい♪』

 この調子でのらりくらり返事をはぐらかしながら全員が知らん顔を決め込み、その子がどんなに困って泣いても最後の最後まで向き合わず放置する。
 その後は何も無かったことにして、永久に家族の会話でも触れないタブーにしてしまおう。遠まわしにでも口にしようものなら、老い先短い、怖い怖いお爺ちゃんが執拗な嫌がらせと嫌味いっぱいの指摘を、向こう一週間にわたり蒸し返すルールだからだ。
 あとは事ある毎、どうでもいい場面で御両親は『子供たちが元気に暮らせる明るい未来のため』とか、『シンシでテーネーに、家族の皆さまにゴセツメー致します』とか繰り返して、現実には実効策を何ひとつやらずにとぼけて暮らす。
 これでゲームの進行としてはOK、特にゲーム終了の節目は設けない。

 子供を傷つける、子供の心に深い傷を残すという表現は、こういう仕打ちをもって言う。
 お子さんもお孫さんも、家族思いの暖かく優しい情操を育みながら、学習意欲は満々で成績優秀の学生時代を経て、世のため人のために尽くす立派な社会人に成長すること請け合いである。これが『人づくり改革』だ。

 嘘でも冗談でも、ものの例えでもない。現在進行中、日本社会のガチの姿だ。
 使ったのは数字を書いた紙切れだけ、これで親子の信頼関係さえいとも簡単に崩壊する。これは是非『怖い』と意識して御記憶いただきたい。

 おっと、唐突だが忘れないうちの余談を。
 前回のアップの時から突然のことなのだが、某ファイルにコピーしておくため自分の文章をざっと拾おうとしても、数行いったところでカーソルがスタックしてしまい拾えない現象が発生している。勝手についてくるポップアップ広告が異常に重い訳でもないし、ただの文字フォントなので592回を重ねていても、過去のデータ総量なんか微々たるものでしかないのにな。
 他んちのサイトの文章なんかは問題も無く拾えるんだが、何かのバグだろうかね。
 まあいいや、そのうち元に戻るかも知れないし、しばらく様子を見るか。

 話を戻して、今回後半の借金請負人ゲーム、バカな大人がどれだけバカかを自覚させる目的の皮肉であることは解るね。
 若いあなたがたはこの知識を、誰か友達にいたずらででも負担をかける目的や、殊に自分より小さい子や弱い子を苛めるような目的では、天地がひっくり返っても使うなよ。遊び半分で済まないその辛さ、御存知だろう。頼むぞ。

 心得て着々と学びながら、今は大人たちの所業をよく見てやれ。形勢の変化は、意外な時期に意外な展開で訪れるものだ。予測なんかできないし、しなくていい。
 その時めがけて、もっともっと詰め込むぞ。ついて来いよ!
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