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【1022】上方お笑い芸人、実直転身ストーリーの台本 [ビジネス]

 いかん、重たい系の話に戻す予定でいたのに余計なことを思い出した。
 まだNHK朝ドラの話題をひきずるワケだが、主人公るいの里親夫婦や店の常連客たちが漫才のような掛け合いを日常的にやっているシーン、あれはあながち舞台が大阪であることを強調するための行き過ぎた演出とも言い切れないのだ。大阪中心街に生を受けた者として解説しておこう。

 まずは本題とは関係ないが、この機会に全国に周知しておきたい前置きから。
 昭和の時代、現在から想像もつかないくらい『首都東京が日本文化の標準』であった。そこらのテレビ番組や雑誌記事も大概だったがまだマシな方で、小学校の道徳の教科書だったか、関西人の登場人物が『君達そんなことを言っても、僕にはこれから塾があるのや。では失敬』とか、コイツいつの時代のどんな出自の日本人だよとツッコミたくなるようなコトバで会話していたものだ。
 凄まじく癇に障る。イライラする。背後にまわって口を塞いで左胸を一突きしたくなる。伝統的正当な標準語に、シロートが思い付きで典型的関西弁アレンジを施すとこうなるのか。

 これが平成の時代一気に東海道を通じた情報交換および文化の混成・均質化が進んで、今はほぼ自然な関西弁が流通するようになった。
 これは良いコトだとして、一部でしつこく尾を引いていたのが一人称を『ワイ』とする架空の大阪文化である。大阪を、京都・神戸・奈良などと対比させたい場面設定で目立っていたような気もするが、とにかくあり得ない。
 もちろん『ボク』『オレ』が普通で、ふざけたり勿体付けたりにしても『ワシ』までである。私は半世紀以上の人生で一人称『ワイ』の関西人など見たこと無い。平成になって以降は、関西とくに大阪文化を必要以上にコミカル強調しようとするケースも時々見受けられ、そのイチ方策だったのかとも思うのだが。

 まあ外から見てそうしたい動機は理解できなくもない。次はピアノの鍵盤を思い出していただきたい。鍵盤楽器のあるおうちは音が出せるよう準備ください。
 普通の『ハ長調のド』というと、いちばん真ん中らへんの二連黒鍵があって、そのすぐ左にある白鍵だよな。この二連黒鍵から、間隔を空けて低い側の直近お隣の黒鍵ひとつと、高い側の直近お隣の黒鍵ひとつ、これら2音を加えて使うのは合計で黒鍵ばかり4音のみ。低い側から順に『ラのシャープ』『ドのシャープ』『レのシャープ』『ファのシャープ』ということになる。ここまでよろしいでしょうか。
 ではいちいちシャープは書かずに省略するとして『レ・ファ・ラ・ド・レ』の音程進行を確かめてみていただきたい。短調の響きになるはずで、これを『タン・タン・タタン・タン』のリズムで弾いてみよう。

 私がまだ思春期に達する手前、小学校でいう中学年の頃に『どっこい大作』という連ドラをやっていた。田舎から上京してきた苦労人青年の大作くんが、世知辛い都会に揉まれながら成長していく…という大筋だったはずだが、具体的な内容の記憶は皆無だ。暑苦しく汗臭そうな画像が検索に掛かってくるので、雰囲気は掴みやすいだろう。
 申し訳ないが、子供心にあんまり面白いと思えるものではなく、だが当時は他に娯楽が無かったこともあって、多くの子供たちがそれを視聴していた。

 いけすかない都会者に理不尽な妨害を喰らったりすると、大作くんは『…どっこいいっ!…どっこいいいっ!』と呟きながら雨の中を懸命に全力疾走するとか、そういうシーンがストーリー展開のお約束になっていたワケだが、上記のモチーフはその時の定番BGMなのだ。印象的で耳に残る。
 この『どっこい大作』初回放送の翌日、もう学校では級友たちがこのBGMに乗せて『おっちゃん今晩は♪ おっちゃん今晩は♪』と歌う声が飛び交っていたのを思い出す。
 年齢一桁の小学生の教室で、『みんな』でも『おにいさん』でも、せめて誰かのあだ名でもなく『おっちゃん』が選ばれ、『おはよう』でも『こんにちは』でもなく『こんばんは』が充てられているところがポイントである。軽く手のひらを片方立てて暖簾をくぐるような振り付けもされていた。

 かつての現場のズバリ当事者でもない立場から、ここで活字だけ読んでどのくらいあの環境の空気が伝わるのか未知数なのだが、ともかく大阪下町のど真ん中というのは、幼少期のうちからこんな育ち方をする。もともと子供の流行りゴトの標的は大人にとって意外性の衝撃があるものだが、昭和の大阪下町の子供社会は、必死で考え出すでもなく、腹を抱えて笑い転げるでもなく、休み時間のアイドリング会話がこういう日常ペースで動いていたものだ。もちろん大人が咎めるはずもない。
 こんなものわざわざに分析眼で取り上げるようなコトでもないんだが、くだんのクリーニング屋さん夫婦ぐらいなら『おらんとは言い切れんな』『ゼロではないやろ』ぐらいの感覚で見れるという訳だ。

 さて、ハナシをちょっと戻すが『東京が日本文化の標準』だったと述べた。
 ちょうど昭和いっぱい、平成元(1989)年時点でも、海外からナニか凄い人物・物品・興業が来日したり、国内モノでもどこか一箇所だけとなると、もう百発百中で首都東京だったのだ。
 大阪は、近隣の京都・奈良を含めて日本国における首都圏相応の存在感を自負する気質が強く、私自身も含めて『あれも東京これも東京、なんでも東京』を見るたびに歯がゆい思いをしていた気がする。音楽ライブも美術展も展示会も、どうしても一度は見たいナニナニが東京だけの開催というのが実に多くて、需要はあるのに不当な切り捨てに遭っているかのような気分を毎度味わっていたものだ。
 表現が難しいが、『たった一回なので仕方なく』以上の大阪格下を感じさせる扱いに悔しさを噛みしめたのは、私だけではあるまい。

 そんな私自身が首都圏に就職して社会に馴染む頃には、むしろ大阪文化が積極的に普及され首都に次ぐ万年ナンバー2という全国的な固定概念も消失して行ったのだが、その後も長らく変わらなかったのは『大阪社会の大阪気質』という、大阪社会組織の自我に顕れる特徴的な性格である。
 大阪文化圏のヒトの集団は、良くも悪くも『論理より気分』『道理より感情』の精神土壌がとにかく強烈で、まさかまさかの番狂わせや大逆転があり、肝心なところでも社会人としての是々非々やモノの道理が一筋縄で行かない。
 首都圏だったら理詰めと機械的シンプルな情報公開で処置が落ち着くはずのことも、御近所付き合いや馴れ合い優先で物事が動いてしまい、とにかく全体周知のオープンな納得が二の次になりがちだ。結局は全体効率が落ちることになるのだが、発生する損害がまた『袖の下』『ダマしダマし』みたいな暗黙のルール度外視と曲解で受け流されているので、関係者個々人の立場としては切実な自組織の欠陥にもならず、『世の中そんなもん』で終わってしまう。
 解っていてそうなってるんだから、指導だの説得だの解説だの、首都圏型お利巧さんが標準語で語るような常識的なアプローチでは無力、そもそも問題事象の特定や把握からして絡んで来れない。

 汎用ルールよりもウチワの慣習や掟が優先するのは、いわゆる『イナカ』『ムラ』に共通するコミュニティ特性だが、特に大阪の場合は日本史知識としての首都経験の記憶と、関西一円を含めた都市機能の質・量の充実もあって、完全にそこで『井の中の経済生態系』が閉じるだけの完結性を持っている。全国から異文化を背負った『おのぼりさん』が出会う首都圏とは、独自性がまかり通る空気の純度が違うのだ。東西両方の組織文化を知る身としては、首都圏は『普通』がフツーに効くぶんやりやすい。
 冒頭に述べた通り、高度経済成長期の『いつもオイシイところを東京に独占される』という実力派ナンバー2のフラストレーション記憶もあって、やたら首都東京に反目を誇示しようとする文化背景も加わり、大阪は中央権力から逸脱して恣意的に標準規律を蔑んで、そしてここからがマズいのだが、汚し放題でドブ川にしてしまった流れの中を、みんなで腐って溺れる文明秘境にして滞っていた…というのが私の率直な見解だ。
 自他ともに諦めたヨゴレの笑い者がホームポジション、残念な故郷だったのである。

 この腐って詰まったドブ川の排水溝に風穴を空け、溜まった瓦礫や産廃を放置せずひとつひとつさらえて改善してきたのが、橋下行政改革に始まる維新勢力だ。社会組織を考える視点で見て、『怨念・執念由来の土着性880万人自虐気質を気分転換させた』という驚異の実績として扱うに値する。
 日本全国を網羅する通信トラフィックの情報環境整備が進み、同調を強要してくるイナカ慣習・ムラの掟に陰湿な窮屈を感じて『イヤなら嫌って距離を置く』デジタルネイティブ若年層の台頭もあり、いま大阪は随分と『悪い意味での大阪気質』を浄化することができた感じだが、まだまだ日本じゅうには『イナカ』『ムラ』が数多く残っている。夏に大きな選挙もあるし、日本各地の、特に若い人たちは、しっかり知識を蓄えて考えて、もう棄権したりせず準備を整えておこう。
 未来社会に興味の持てない老人どもが、いつまでもイナカやムラから慣習や掟で身内議員を当選させてしまうため、前時代式の架空ママゴト劇で国政が迷い続けるという関連性は、間違いなく存在する。

 『この週が明けて、後半からまた燃料の小売販売価格がこないだ以上にあがるかも知れない』と耳に入っているのだが、まさか現実にはならないんだろうな?とイチ国民としては釘を刺しておきたい。原油備蓄の放出なんぞ焼け石に水なのは最初から判っていたことなんだし、こんな事態のために決めていたはずの、燃料値上がり非常事態でのガソリン税解除の実行議論はどこいった?

 最初この話をするつもりで前回を書き始めたものの途中で忘れてしまい、音楽ネタで終わらせてしまったので、朝ドラが昭和の大阪設定をやっているうちに駆け込んでおきました。
 よし、シビアでシリアスな路線に戻れたかな。では今週もグッドラック!
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