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【740】偏食五感のフシギ体験学習 [ビジネス]

 改元跨ぎのゴールデンウィーク2日目を迎えて、まずは訂正から。
 前回ほんっとに何も考えずにざぁーっと作文し、『大阪府堺市で大事な税金が億単位で行方不明』と書いているのだけれど、実はこれは言い過ぎている。
 正しくは、『前・堺市長の政治資金に収支の不明瞭なカネが億単位の金額で存在する』のであり、その政治資金が丸々税金資本の支出金で、それが行方不明だというハナシではない。不明瞭…というか当初は収支報告書に記載がされておらず、だとすると使途も怪しいし課税対象としてカウントもされない訳で、そこがマズいでしょ、というハナシである。
 どっちにしても良いワケないのだが、とにかく認識違いの論調で突走ってしまいました、ゴメンナサイとお詫びして、ここに訂正いたします。

 さて前回後半に触れた視覚認知機能について、もう少し検証を入れておきたい。
 眼球は迅速に動いて、的確な構図で目前に拡がる光景を画像としてとらえるのだが、視覚情報として自分が認知できる画像データのテンプレートのようなものを持っており、お決まりのデータのパターンに合わせ込む作業で、眼球が映しに行っているのではないかという仮説だ。これが当たっているのだとすれば、この定番パターンにハマらない画像は視覚認知されないので、その先の情報処理に乗っかって来れない。
 偶然に任せて飛び込んでくる画像データをゼロから正直に取り込むばかりでは、画像データの処理にかかる容量・速度が無駄に多過ぎるため、生物はもっと情報的に省力化を織り込みながら進化して来たのではないかと。

 私が真先に連想したのが、日本語文章の変換プログラムである。
 平仮名で語句を打ち込んで変換キーを叩くと選択肢がずらりと列挙される…というのは今や説明不要なくらい一般的な操作シーンとなっているが、開発初期はその反応速度のトロさが箸にも棒にもかからないくらい酷かったらしい。
 そこで一文字打ち進めるたび直近過去の変換履歴の記録ライブラリーを参照して、確か頻出順に選択肢としてずらりと列挙するロジックに思い至ったというのである。
 例えば今ちょいと携帯を取り出してメール作文モードにし、『あ』と打つと途端に『1.ありがと…』『2.明日』『3.あります…』などと選択待ちの板が表示され、『あい』と続けた瞬間に、これが『1.間』『2.愛』『3.相変わら…』と変化する。この勢いで反応するのは、『あ』あるいは『あい』の文字列に、ただ機械的に整合する直近記録を拾って来るだけだからだ。
 限られた語彙で似たような会話を繰り返す限り、恐ろしいまでのスピードで会話ができてしまうのは最近の若い子たちの手元を見ていればすぐわかる。もしかしてこれじゃないかと思い当たったのだ。
 我々は普段の生活において、見慣れた文字をいちいち初出対応の形状認識で新鮮にとらえ、記憶ライブラリーとのシラミ潰し式の同定操作を経て読解しているはずがない。

 音声データに関しても、同じような認識プログラムが働いているのではないかと思う。
 別に特殊な訓練など積まなくとも人間には、背景ノイズが交錯する渦中でも、狙った人の声や会話をフォーカスして聞き分ける能力があるという。
 物理学的に考えるなら空気の圧力波としての『音』は、いくつの音色がどんな位相で重なろうが、その結果としてひとつの複合波形になるだけのことであり、つまり耳に届いて鼓膜を揺らす押し引き代とそのタイミングが全てである。

 紙に第一象限の縦軸・横軸を描いてみよう。縦軸が鼓膜の押込み代、横軸が時間だ。
 横軸上に『逆V』を描こう。圧力波が耳に届き、鼓膜が一度押し込まれて戻った。いいね?
 次に上記『逆V』とぴたり同じ幅で、同じ高さのふたつ山で『M』を重ねて描いてみる。最初に描いた圧力波と同じ音圧で、2倍の振動数の圧力波だ。この『逆V』と『M』の高さを足し算しながら、新たにもう一本の線を描いていくとどうなるだろうか。
 真ん中の谷底が『逆V』の頂点に一致した、背の高い『M』の字が描けるはずである。アナタの鼓膜は、この『背高M』に沿って押し込まれたり幾分引き戻されたりした後、元の位置に戻る訳だ。

 この『背高M』の圧力波形で鼓膜が揺すられた時、アナタは『逆V』の音と『M』の音が重なったものだと認識できるのである。但し、アナタが過去に『逆V』の音色と『M』の音色を各々聞いて、記憶ライブラリーにそれらのデータが用意されている必要があるのだけれど。
 『あ、これ何て言ってるっけ?』と狙って耳を済ませる時、途切れ途切れにでも聞きとらえたターゲット波形の記憶を元に聴覚認識テンプレートが作られ、ナウ鼓膜を揺らす合成波形に整合させては、ターゲット波形成分を特定し、抽出して音声読解しているのだろう。
 これがオッサン声『撮ったのかよ』vs子供声『デイ・アイ・アイ』のダブルイメージ音声の正体だと思う【181】
 上記の原理によって、周波数=音程に結構はっきりと差がつく二通りの聞こえ方になるのが解るだろう。ほぼ同じ声色で全く別の台詞というのは、合成波形が作れる以上は一応起こり得るのだろうが、何か相当に各々条件を整えてやらないと、極めて区別が付きづらいはずだ。

 で、再び視覚に話題を戻して、記憶ライブラリーに二種類の視覚認識テンプレートが揃うなら、ドレスの色が『白と金』vs『青と黒』の二通りに見えたりもする訳だ【361】
 これ両方の色でそれぞれ見える方ならお解りだと思うけれど、何というか、目前の現実として存在するドレスが『白なら白・青なら青』で、そもそもっからホントに違う色の生地なんだよな。『何色に見える』とかいう問題じゃなくて。
 双方の服地を各々の光環境のもとで見た実体験の記憶が揃わないと、このダブルイメージの往復は楽しめない。ウン、当時の私の推測は、聴覚も視覚もだいたい当たってたな。

 ついでにもうひとつ言及しておく。ハリウッドスターなど美男美女の顔写真をたくさん用意し、無作為に横2枚に並べた画像を何枚も作る。これをせいぜい1秒以内の間隔で次々と映し出すのだ。2枚の写真の中間点を凝視し続けると、どんどん映し出される美男美女の面々が醜く歪んで化け物のように見えるという錯視実験があるのを御存知だろうか。
 恐らく、左右の目は同一人物をとらえる前提で視覚認識プロセスが入力待ちするのに対して、全然違う人物の顔が左右の網膜に別々に投影されるため、画像を正確に情報処理のステップに乗せられなくなって混乱し、左右の視覚を一致させようとする修正過程が画像を歪めるのだと思う。

 そうそう父もそうだったが、意識がしっかりしていて思考できている人は、寝たきりで言葉を失っていても目の動きで判るのだ【100】
 う~ん、ここまで考えられたんだから、そろそろ『あ、こうやりゃヤク離脱過程でも効率落とさず仕事できんじゃん』みたいな方法論を思い付いても良さそうなもんなんだがなあ。
 ともあれ、こんなことにでもならなければ絶対に得られなかった知見である。文句たれず平成いっぱい、残りも頑張りますかー!
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