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【705】コスモクリーナー目指すガラクタ宇宙戦艦の航海プラン [ビジネス]

 大学4年生の研究室時代、私は機械系だったのでスイッチを落とせば実験装置は止まった。一方そうはいかないのが金属工学やバケ学系の連中である。
 ケミカル反応はキホン人為操作で加減速させられないし、その途中経過も何が起こるのか目を離したくない。当時は常温超伝導が話題になっていた時代でもあり、それ系の研究室に遊びに行くと、床に寝袋を脱ぎ捨てたまま研究に没頭している学生の姿が珍しくなかった。

 この機会にちょっと横道で、常温超伝導の解説を挟んでおく。ある種の物質は、絶対零度=マイナス273.15℃【425】にあとひと桁℃まで迫るぐらい冷やしてやると、電気抵抗が急減してゼロになってしまうことが以前から知られていた。電気抵抗ゼロといえば、それだけで応用先が無限に思いつけそうなのはすぐ判る。
 ただ絶対零度近くまでモノを冷やすというのはタイヘンな手間やコストがかかるため、超電導コイルなど実用例があるにはあるが、そうそう一般的には普及させられないでいた。

 昭和の終わり頃、特定の化合物においてそれまでの常識を覆す高い温度…とは言ってもマイナス2百いくつというレベルではあったのだが、それにしても画期的な高温で超電導となることが発見されたのだ。これにより、何だかよく解らんが絶対零度近くというのが超伝導の必須要件のひとつっぽいと思われていたのが、もしかして探せば常温で超電導となる物質が見つけられるのではないかと一気に研究者たちが色めきたったのである。
 早いハナシ、いろんな素材物質をいろんなプロセスで混ぜ合わせて、電気抵抗を測定しながら冷やしていくという実験になるのだが、これが世界中の企業・学校を始め研究機関で大流行し、どれだけ高温で超電導現象の確認に成功したかの激しい競争が繰り返された。

 よって、学生たちは研究室に文字通り住みながら、原料素材を微粉末に擂り潰したり、均一に掻き混ぜたり、腕ずくで突き固めたり、高温の炉で焼結させたり、そのほか何を使ってどう捏ねくったかは知らないが、とにかく日夜そんな作業に入れ込んでいた。
 そのまま振り返った位置にある実験テーブルにはカップラーメンの容器が重ねて放置され、雑誌や酒瓶もあちこちにゴロゴロ…というのが、まあ当時の理系バケ学研究棟の『あるある情景』だったのだ。

 我々機械系は、研究対象に引きずられて昼夜サイクルが狂うということはなかったのでもっと常識的?で、天気の良い日中にゼミや実験や講義の隙間時間ができたりすると、近所の酒屋やスーパーで缶ビールと食い物を調達し、実験棟外壁の保全用ハシゴから3階建て研究棟の屋上に上がって、さんさんと陽の降り注ぐ緊急の飲み会など開催したものである。
 そんなことして転落したらどうするんだと言われそうだが、勉強がちょっと得意な若くて元気いっぱいのバカ学生は誰も落ちないから心配するなというのが正解である。まあ落ちて死んだら自己責任だな。
 もう時効だし、御当人がこの世を後にされているのでバラしてしまうと、その中に助教授が混じっていたのだから笑ってしまう。皆さんは上司やセン公とこのぐらい腹を割れていますか?

 愉快な仲間たちと好きな勉強を好きなだけ追求する場としての大学および研究室があり、そこ起点の発想都度で衣食住もお馬鹿エンタメも自由存分に派生させていく。実に理に適った昭和最高学府の実態である。
 大阪南港の巨大な近代廃墟をこんな感じに転用できたら良いのに…と考えたのが前回だ。

 大規模な吹き抜け構造は、気温差による鉛直方向の対流運動を許してしまうため、内部空調にはどうしても非効率が拭い去れない。上層階が暑く下層階が寒くなるため、各階各所で局所空調を工夫するとか、できるだけ強風を発生させないよう気を付けながら攪拌を加えるとか、何かと面倒だ【395】
 だが寝袋ひとつやテントひと張のフリーアドレス建屋内でずっと暮らすんなら、寒がり暑がりが各自好みの温度環境を探しながら面白く住み分けるのではなかろうか。また吹き抜け建屋は通信の相手となる『対岸』があり、その上下にも空間の拡がりがあるので、看板を出せばかなり大勢に読んでもらえるし、音を出せば良くも悪くもみんなに聞こえる。せっかく吹き抜けちゃってんなら、それを利用してみよう。

 ところで宇宙戦艦ヤマトの乗員たちは、床全面ディスプレイの上を歩きながらイスカンダルへの航行プランを討議していた。あれってカッコいいし、機能性に優れてたりしないだろうか。
 例えば吹き抜けの1階にでも市販のディスプレイを碁盤に敷き詰めて支持強度のある強化ガラスで覆い、ここで都市計画や社会実験のディスカッションができれば、リアルに宇宙戦艦ヤマトごっこが可能と思われる。
 最新の凝った3D建築CADなんか不要、そこらへんの会社でお払い箱になった10年前のパソコンに、多色ワイヤーモデルが組める程度のCADソフトでも放り込めばコト足りるだろう。やってみたら案外使いづらくてダメだったというパターンが怖いので、小さく始めて面白かったら増やしていくのが良いと思うが、床上の人口密度は低く抑えたいから小さ過ぎはイカンな。
 強化ガラスはどっかの展望台や水族館で使った中古品なんか無いのかなあ。少々キズがあったところでその方が気を揉まなくて良いし、普通に見えりゃ別にいいじゃん。ディスプレイもパソコンもソフトも型遅れの市販品で十分、いや4Kや8Kの高画質でなんかなくていいのでサクサク動いて欲しい。ホント最近の重くて扱いが煩わしいばかりの画像データには辟易だよ。

 上層階から討議進行の全体像を見下ろしていてひらめいたヤツは、例えばちょっと丈夫な透明板に手早く厚紙なり透明のカラーアクリル板なりで直方体や円柱の建屋模型を作って貼り付けて人工島の1ブロックを仕立て、それを1階に持って駆け降りて、床面ディスプレイの上に重ね置きさせてもらって討議に乱入だ。太陽になるスポットライトひとつ用意しておいて照射角や色味をいろいろ変え日照と景観の参考にするとか、周囲にミストなりスモークなりのノズルをずらりと並べておいて扇風機を片手に風流れを見るとか、お手軽の思い付きでどんどん試しながら構想が拡げられるのではなかろうか。
 そうそう床面ディスプレイとは関係なくなっちゃうんだけど、遊び半分に全ノズル噴射で床面ディスプレイのぐるりを囲む白煙の壁面を立て、中からプロジェクションマップ撃って外からどう見えるか、逆に外から撃って中からどう見えるか試してみたいぞ。館内一斉の通達手段としてどうかね?
 こんな感じでいろんな模索行為が創出できる『アイディアお祭り広場』はあって良いと思う。

 床面画像を夢洲人工島ラボYAILの平面図、大阪都特別4区の交通路線図、ときに東京23区の人口分布図や日本列島の7月降水量マップなど次々と切り換えながら組織フラクタル社会実験の創案テーブルとして起動させるなら、この程度のあり合わせ装置で始めてみるのが良いんじゃないかと思った。
 若い人たちには、自分たちの暮らす社会を俯瞰しながら歩き回って、最適解の段階スケールアップ工程を考えてみたくなったりして欲しいんだが。
 今の若者たちが宇宙戦艦ヤマトで喜ぶかどうかイマイチ心配なのだが、こんな空間で発想を膨らませ知恵を出しながら社会を観察し、課題設定し、方策検討し、実験検証を経て次なる模索にかかる。これからの社会運営=政治は、こんな形式にするのが国家繁栄の可能性を見込めるのではないかと思う。

 ここは読者層の質が非常に高いので、勘の良い方は気付かれてるかな。こういう時空間でクリエイティビティ溢れる暮らしに楽しみを見出した人間はカネなんか欲しがらない。そう、この最先端アイディア創出センターが実現するのなら、ベーシックインカムのトライアル導入も可能になると考えている。
 ずるい利権のウチワ贔屓にばかり執心してカネしか欲しがらない、そんなことしてようやく持ったみっともないカネで内向きに威張って我を通すぐらいにしか人生の満足感や生き甲斐を見出せない惨めで劣悪な老衰個体が、邪心で思いつくような議案を採り上げ私欲都合で論じるような政治だから、こんな内情崩壊・渉外ナメられ放題の惨状になった。
 平成の元号を間もなく終える日本国は、大掃除が必要な時期を迎えているのだろう。

 若者たち、『昔は良かった』の昭和懐古で悪かったけど、こういうのって興味持ってくれる?
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