SSブログ

【662】マスコミ演劇講座の先進ネタ探し [ビジネス]

 数日前たまたま知り合いに訊かれたのである。
  『仮想通貨ってナニが良いの?』
 ここを御覧いただいている方には御馴染みの通り、その本質的な回答は
  『一部の悪い人間が、こっそり自分勝手なアンフェア操作をやれないのが良い』
ということになる。そう、ブロックチェーンの仕組みである。

 皆に知られると困るような思惑を持った人間が、皆に知られると困るようなコトをする時、基本は皆に知られないよう人目を避けながら、組織の仕組みに小細工を仕込む。
 社会組織の中で生きる人間ひとりがその社会組織を裏切るからには、こそこそ不正操作を加えた情報をでっち上げて組織に密かに放つ工程が必ず発生するものだ。この時『何が正しくて、何が不正なのか』の判定基準があやふやだと不正が横行してしまうのだが、そこに『事実=正として機械的にネット拡散する』という発想が秀逸であった。

 今や『御存知の通り』と言っても大丈夫な気がするのだけれど、ブロックチェーンは仮想通貨に特有のシステム概念ではなく、あらゆる情報共有空間において、関係者全員が相互監視することにより不正やミスの誤作動を防ごうとするものだ。
 仮想通貨について具体例を挙げるなら、取引情報の記録データ=デジタル二進数のナニガシかに対して、一義的に算出して決まる『ハッシュ値』を対応させ、『ハッシュ値』のタグがついた取引レポートとしてデータブロックを形成するという方式になる。ブロック形成都度、それが関係者全員にネット拡散されるワケだ。

 例えば誰かがこの取引記録データを改竄すると、記録データの改竄操作に呼応して機械的に『ハッシュ値』が変わってしまう。すると改竄前時点で関係者全員に拡散されたオリジナルのハッシュ値と不整合となるので、それが検出され、それをトリガーにシステム緊急停止・トラブルシューティング開始となる。
 仮にそのハッシュ値にまで不正操作を加え、オリジナルと見分けのつかない偽ブロックが作れたとしても、先発のオリジナル版が広大なネット空間のどこでどう受信されて残っているか、改竄操作の張本人からは追跡しようがないから、オリジナル版を狙い撃って偽ブロックに置き換えに行くことはできない。
 ま、原理的にはある意味、過去ふざけ半分にアップしたフシダラ写真が独り歩きでバラ撒き状態になり永遠に消せなくなって困ってます…の悩みを逆手に取ったと言えなくもない。この高速大容量通信網の不可逆性を、不正やミスの防止に転用しているところがアタマ良いと思う。

 前にも述べた通り、ここはおいでくださる御贔屓さん方々のクロスチェック眼で持っている。
 事故や故障による通信不具合なんかただの偶然でしかないので、まあそのスジに詳しい読者さんにどんなトラブルが起こってそうか御想像を巡らせていただくまでとして、仮にここをハッキングして、誰かが私になりすまして更新を始めようとするケースについて考えてみよう。

 さて私オリジナルの姿とは…だ。
 毎回テーマの設定はメチャクチャ不確定で、酷い時には途中で気が変わって別の話を始めたりする。更にそれも気分次第で気紛れに切り上げてしまう。自分でも先行き決めずに書き始めてるもんな。
 でも御贔屓さんにとっては、宇宙ロケットの話であろうが、政治経済の話であろうが、小鳥の話であろうが、たった一回ぶんを御覧いただければ『これ、ヤツじゃないか?』と勘付いていただけることと思う。
 逆に誰かがネット検索でちょっと調べ事をして、私の好きそうな飛行機や人工知能の解説なんぞ俄か作文したところで、恐らく数行も読み進めば『これヤツじゃないじゃん、誰だよ?』と見破れることだろう。

 まずまずの分量だとはいえ、私が発信し皆さんが受信しているのは所詮、日本語文章の文字列のみだ。
 だがそこに感じ取れる『何か』がハッシュ値として効いているのである。ハッシュ値相当の機能が文中の規則性に間違いなくあるはずだが、掴みどころがなく分析しきれず、故に再現もできない。

 さて『何かあるんだが、掴みどころがない、分析できない』と白旗を上げてしまう人間クンはそこまでなのだが、これが人工知能だとどうなるのだろうか?たかが文字列だし『AIがなりすましたニセ私』って可能なのだろうか?

 人間が様々な打ち手を教え込んだ『アルファ碁(Alpha GO)』が人間を打ち負かした後、今度は全く無知の白紙状態から、このアルファ碁を相手に対戦を繰り返して学習を重ね、最終的にアルファ碁を負かしてしまったのが『アルファ碁ゼロ(Alpha GO Zero)』である。
 その学習経過を観察していると、いわゆる『定石』の手が顕れてきたりもするのだが、そのうち淘汰されて滅んでいったりもするのだという。つまり、本当なら想像を絶する先の先まで読んで巻き返せる手なのだが、人間能力の常識レベルの未熟さにより、人間はそこまでできずに負けてくれているので、当面のところ定番の勝ち狙いの手法=定石として通用しているということか。
 ともあれ、『アルファ碁ゼロ』が文字通りのゼロ起点から『アルファ碁』を負かすまでにかかった時間は、僅か7時間ほどだったと聞いたことがある。とてつもない学習能力である。

 例えばここの文章を片っ端から入力し、ここの次回の更新として通用する文章をあれこれ出力させると、途中経過にどんなものが現われては消えるのかタイヘンに興味がある。ポイントは、『掴みどころがない、分析できない、ムリ』とギブアップせず、ひたすら機械的・統計的・合理的に模倣を繰り返してくるというところだ。
 何か試行錯誤を交えた人間の成長過程に通じる現象が見えたりはしないだろうか。例えばスタニスラフスキー・システムなんかと照らし合わせながら検証すれば、『人間が正しい目的をもって合理的に言動する』という情操整備・人材育成の画期的ヒントなど転がり出てきたりはしないだろうか。
 スタニスラフスキー・システムとは俳優育成プログラムの基本コンセプトのひとつで、ぶっちゃけ内面の目一杯まで理性的にも感情的にも役を理解し尽くし、それを人間として自然な精神と身体の使い方で、演技として出力するための方法論である。
 あ、普通イメージするような体系整理された方法論にはなり切ってないかも…とりあえずぶっちゃけ理解で良しとしてくださいな。実はぶっちゃけ過ぎてるんだけれど。

 『いま伝えるべき真実の情報を、信念を持って、率直かつ誠実に伝える』という仕事を、いともだらしなく放棄してしまった日本社会の公共言論だが、マスメディアに関わっている人種ならスタニスラフスキー・システムは聞いたことぐらいあるだろうし、この業界土壌を利用して、うまく矯正の潮流を作るきっかけが得られないかと思った。

 まず巨大組織生命体たる日本社会が、素直で正確な五感と自然な思考動機を持たないと、今日をどう断じて明日をどう変えるかの話が始まらない。リアル空間の言論勢力が全滅なら、仮想空間の側からブロックチェーンを使って喝を入れてやろうじゃないか。
 今回は、こんなお話に舵を切ってみましたとさ。
nice!(15)  コメント(0)