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【616】球体式戦略思考術<8> [ビジネス]

 『大』の字を書いて、てっぺんにマルをつけよう。『マル大』型・棒人間の絵である。
 このヨコ第一画と『人』の交点、若干左寄りに位置するのが心臓である。体内の物流は、この心臓から血液という流動体に乗せて四肢軸心部から放散方向に送りだされ、逆に各末端の表層付近からは求心方向に回収される循環経路となる。で、回収後は腎臓で濾過したり肺でガス交換したりして鮮度を回復、再び心臓から送りだされると。
 体内物流マップの概形は、基本的に『放散→求心』の行って来い四肢別ルートが放射状に拡がっているワケだ。まあバックアップ回路の確保など、都合により行って来い同士を横断方向に貫くルートもあるんだろうが。

 体内では各器官が交信し合っているのだが、このうちの結構な割合が各器官間の最短経路ではなく、わざわざ長々と迂回してまで脳みそを通過しているのではないかと思っている。
 何故なら脳みそには、その経路を形作る通信索と切換スイッチ、及びそこで起こった交信現象の記憶機能があるからだ。

 『ハイこれが人間の脳みそだよん』とお皿にどかっと盛ったのがあったとして、体積でいえばその8割が大脳、1割が小脳である。1割ほど何か別のがいる。ところが細胞数となるとこの比率がほぼ逆転し、大脳はせいぜい2割しかなく、小脳が8割に達する。あの、後頭部の下側にちょこっとオマケでくっついてるような小脳なのに。
 これは情報処理の観点から、対照的な違いがあるためだ。

 大脳の情報ストレージ形式は『深層低次元学習』と呼ばれ、有り体に言うと階層フォルダーを重ねまくったデータ整理形式だと思っていただきたい。
 脳科学的な正確さの追究を放り出した思い付きの例え話だと断るが、デスクトップ画面の『視覚野』フォルダーの中に、『高速接近の飛翔体』フォルダーがあり、その中に『スポーツで使うボール』フォルダーがあって…と、次々フォルダーばかり開いていく感じである。
 『野球のボール』フォルダーを開くと、遂に『キャッチボールの受球』ファイルや『バッターボックスでのデッドボール』ファイルが現われて、ああ、今はキャッチボールだから受けよう、とそれを開く…みたいな。
 いっぽう小脳の情報ストレージ形式は『浅層高次元学習』、デスクトップにいきなり『何かがどえらい勢いでかっ飛んできたら、目をつぶってかわしましょう』ファイルや、『ちくっと感じたら、四の五のいわず悲鳴を上げてその部位をひっこめましょう』ファイルが一面無数に並んでいる感じだ。必要事項の動作マニュアルが、直接のベタに必要ぶんだけ並んでいる。
 ロジカル思考や体験記憶など理性活動の情報ストレージは主に大脳が司っており、体内臓器の不随意反応や反射動作は主に小脳が司っていると、よく言われる。

 飛び交う無数の体内交信を総観視野にて俯瞰するためには、まず全臓器を、そいつらから離れた位置で見下ろす必要がある。だから脳みそは、頭部として孤立しているのではないだろうか。
 その位置で、人間の進化の歴史上で生存確率が高くなるような情報処理、つまり突発危機に遭遇して緊急回避する動作プログラムや、豊富な栄養源に遭遇し美味を感じて休まず完食する動作プログラムなんかが偶発的に生まれてきて、いずれそういうのがデフォルトでインストールされてるヤツなんかが勝ち残ってDNAを紡いで来たんだろうな。
 生物の自己保存として『問答無用の迅速に反応すべき行動パターン』の動作プログラムは、アクセス速度優先で『浅層高次元学習』を経て小脳に蓄積された。そうでない冗長で気まぐれな余剰行動に関しては、『深層低次元学習』で効率的なストレージに収めるとともに、フォルダー内情報の確率問題的な組み合わせ発現によりクリエイティビティを発揮させる。こんなところだろう。

 人体CPUのクロック数に応じて、定型化や記録などの処理が可能な交信現象単位数は限られており、だから随意・不随意の差が身体各部にある反面、手や足で何か操作すると意識がそこに集中するとか、怪我をした時だけそこが気になるといった『部位存在感の可変性』みたいなものもあると。普段なら意識の外にあって情報処理の実感がない身体各部も、その気になれば情報処理のまな板に乗ってくることも多い。常時CPUが飛び交う交信の全てを捌き切れている訳ではなさそうだ。
 普段から脳みその中を無数の交信現象が縦横無尽に交錯しており、その中でも生命維持や社会活動に重要なものだけが優先的に強調され時に保存もされて、『反射』『意識』『思考』『感情』みたいな概念で顕れるのではなかろうか。その標準的なデータ・ライブラリーが『人間共通の精神構造や感情反応』なのではなかろうか。
 そしてデータ数が少ないが、生体活動がフル回転しているときオトコが見る夢において、『華美』『壮大』のイメージと、『戦慄』『臨戦』のイメージが、何だか近そうなのである【403】【615】

 ここで話を冒頭に戻す。体内の物流経路は心臓を中心に、放射状に拡がる往復ルートだ。
 いっぽう体内の情報交信経路は、各器官からまず首を駆けのぼって、一旦アタマという隔離ゾーンで脳みその中を通過し、再び首から駆け下りて来て、受信先につながる長編ルートだ。
 もし私の左脳・右脳が、バカ正直に左半身・右半身につながっていたなら、『マル大』型・棒人間の私は人造人間キカイダ―式に左右まっぷたつの二系統となる。
 単品を身体の左右で共有する内臓も少なくないけれど、別々で左右対称に揃う器官に関しては、各々が左脳と右脳にぶら下がる半身クラゲを成すことになる。

 このたび頭や首を手酷くぶっ壊されて実感したが、これってもしかして情報交信経路を一発ひねって、左脳と右半身、右脳と左半身に繋いだ方が、二系統フェールセーフで生存率が上がるんじゃないか?ホントはぶっといロープがわかりやすく単純交叉してるだけじゃないんですけどね。
 例えば右半身の循環系に病原体が侵入し拡がったとしても、脳の左半球は物流往復ルートの別系統に残るためダメージは軽減される。このとき健康な左半身クラゲ君なのだが、替わりに右脳の回線交換手がちょっと調子わりいかなあ、みたいな。
 物流と情報で、系統分けマップを違えているところがキーポイントだと言いたい。

 残念ながら、このハナシはあんまりヤク離脱の加速ネタにはならなかった。
 だが人体の最高点についているアタマを見て、その俯瞰ウォッチャー&交通整理&ノウハウ蓄積の機能要件に思い至れば、賢い正真正銘のリーダーシップ像が見えてくる【611】
 専門医の読者さま方、遊び半分のエンタメ脳科学ですが、何か役に立ちます?
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