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【754】魔法のランプの残油警告灯 [ビジネス]

 そもそも北米とイランの貿易交渉となれば、表面的には静穏を取り繕ったとしても、深い軋轢を秘めた決着にしかならない。こんなもの人付き合いの好き嫌いごときで結論が動く話ではない。当たり前だ。

 いま北米が貿易交渉の会談を持つとすれば、内需ループを固めるため他国に何らかの条件を強いる目的しかあり得ないのはすぐ判るだろう。つまり相手国からは北米に対して厳しい態度が向く行きがかりになるはずで、それでもトランプ君は北米経済の生存体力をまず明確化する腹を括って、北米代表としてその意志決定を発信する訳だ。
 今般、その相手が中東の代表的産油国であり、日本にとって重要な石油輸入元だった。
 我が日本はあらゆる国際交流の場面で北米とは良好な関係を維持する必要があり、これは何をどう強がっても日本国の自己完結で置き換えられるものではない。
 これでは北米とイランの板挟みに陥り、双方から『日本は相手側の肩を持っている』という事実根拠だけ刈り取られる役回りになるのは当然だろう。どこでどんな勝手な情報操作を加えて報道しようが、積荷ともどもでっかい船を壊されて、大損害を被った国と企業と人がいる。その実害の影響は、いずれ必ず顕れてくるはずである。外交失格。

 こと石油に関しては、グローバル視野で眺めるに、北米と中東の熾烈な競争が繰り広げられている感度高い領域なのだ。
 元々中東の原油は、その後の精製の手間も少なくて済む良質なもので、故に世界中から求められてこの地域に豊富な石油マネーをもたらした。もっとも、その埋蔵量が有限であることは避けられない道理としてきちんと認識されており、例えば今のうちに広大な土地を塀で囲った特区を作って最先端学術機関を置き、カネにモノを言わせて世界中から優秀な学者を招聘し学術都市ならぬ学術国家の道を探るなど、一大産油国としての時代の次をどう生き延びるかの模索は以前から始まっている。
 この学術特区内では、早々に女性が自由に車を運転するなど御当地の厳しい戒律も及ばない割り切りがなされており、潤沢な研究資金を提供された世界第一線の学者たちが、故郷と頻繁に往復を許されながら研究に勤しんでいると聞いた。

 いっぽう北米は、原油を含有した砂泥岩層=オイル・シェールをかなりの広範囲で埋蔵しているとされ、二十世紀の頃は採掘技術が無く手が出せなかったのだが、最近になって遂にこれを利用する方策を実用化した。これが『シェールガス』である。
 地上から含油層の一角を掘り当てたら、そこから強酸性溶剤を圧入し地層を割り拡げながら狙いのオイル・シェール層に含浸させた後、今度はそれを回収して精油するというものだ。期待される原油埋蔵量は相当なものである反面、溶剤およびその運用設備や採掘後の精製工程にかかるコストが不可避であるため、採掘事業を始めるにあたっての初期投資が高額となる上、含油層のアタリがついて首尾よく石油が出てからも投資回収できるまでの採算取りが結構チャレンジングな勝負になるという。

 少し前『シェールガス』という言葉が盛んに飛び交った頃が、ちょうどシェール採掘事業がモノになると北米が活気づいた時期ということになるのだが、北米産の石油に市場を席巻されては困ると見た中東産油諸国が、原油の値下げ攻勢をかけ潰しにかかった。よって初期投資額の大きさと採算性軌道に乗るまでの時間遅れに弱点を持つ北米シェールガスは、少なくともいま時点では出鼻をくじかれ当初に目論んだ勢いには乗れずにいる。
 もっとも当の北米国内において、地中にケミカル溶剤を注入するシェール採掘の環境破壊についてはあっという間に大問題になっていた。どう考えても不可逆な土壌汚染であり、どこまで拡大しているかも、いつまで残留するかも全く読めない悪質な自然破壊であることは間違いないから、案外これで良かったのかも知れない。雨後の筍のように乱立したシェール採掘業者は、随分と淘汰されたようだ。

 何にせよ、こんなグローバル攻防戦を繰り広げてきた歴史的混乱の地域の貿易交渉に、なんで日本国がのこのこ首を突っ込みに行ってしまったのかという疑問である。
 確かに中東諸国には独特の統治文化があると見え、マーケット拡大にあたって日本製品の法規適合性を検討していて、『あれれ?この項目ホントに適合で良いんだっけ?』『ああ、向こうが承認だっていうんだから良いんだよ』みたいな、特定の意思決定層の判断による人治制のカラーは感じるんだけどさ。

 だからって、国際交易シーンにおける国家発展の将来性をかけたシビアな交渉だぞ?
 関係ないお邪魔虫の世襲の馬鹿ガキに一方的に知り合いを名乗って押しかけて来られても、双方にとって迷惑にしかならないのは最初から目に見えている。
 いいからオマエん家は、北米vsイラン貿易上のどんな実効メリットをウチに持ってきてくれるのか。この回答なくしては、ゴマメ幼稚園児が無駄な対応の仕事を増やしただけであり、それだけで日本は国際的に疎まれてオワリの体たらくではないか。何しに行ったのかワカランけど、その後の報道も妙に静かだなあ…では済んでないんじゃないのか?

 内政を切り回せず数々の不正と悪事がバレまくった今、1億2千万国民に不適格を突き付けられたレイムダックの犯罪者政権が、まだ往生際わるく一番ピエロを世論の集中砲火から逃がして、よくすればウソの外交成果を国内向けに流せると当て込んだ。国内外の誰もに、とうに見透かされている事実である。
 いま日本国が他国に対して『国力』として行使できる実効パワーなど存在するのだろうか?

 中東は原油枯渇後、『知的財産』という人工資源にその可能性を見出そうとしている。
 知財は保有者と一緒にどこへでも流動する資源だから、誘致も流失も保有者の気分次第であり、つまり優れた人間が求めて望んで暮らせるような自国の生活環境の整備が最優先の必須要件となる。中東は、したたかに地下資源のあるうちに試してそれを構築して、次の時代に引継ごうとしているのだ。

 我が日本国の、地球上文明を生き抜く国家組織としての生命力の衰弱には、ただならぬ危機感を覚えずにはおれない。これが組織の高齢化の怖さというものなのかも知れない。
 一旦どこまで痛い目を見なきゃいけないのかは判らないが、いま腐っても仕方なかろう。
 まずは現実の行方をしっかり確かめて、その時が到来都度きちんと変えていけば良い。

 だから若者たち、国内外の正確な情報をよく選んで、真実を見抜いておきたまえ。
 間もなくG20だしな。 大阪の成長を止めるな。
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