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【656】千客万来祈願、スーパープロモ歴史談話 [ビジネス]

 気まぐれのイイ加減が私の身上ゆえ、更に話題を違う方向に転がしてみようか。
 かねてからスタジオ・ジブリの『風立ちぬ』を話題にしたいと思っていた。しっかり技術的に納得のいく内容となっており、モノ造りの基本を心得た人ならではと唸らされる、ただならない作風を感じるからだ。万々が一にもネタバレにつながってしまってその興行を邪魔する行きがかりにならないよう、ずっと思いとどまっていたのだが、そろそろ大丈夫かも知れない。

 以前にも少し書いているが、『風立ちぬ』はゼロ戦の設計者・堀越二郎技師をモデルにした作品である【309】
 まずは、この作品が完全なフィクションであることを理解しておこう。本作のストーリーは、堀越技師の一生を描いたドキュメンタリーではない。
 そしてもうひとつ、この作品はゼロ戦の開発経緯を題材にしたものでもないのだ。菜穂子さんと手を握り合って設計を突き詰め、当時としては驚異的な性能を発揮した機体は、そのイチ世代前=九六式艦上戦闘機(『きゅうろくかんせん』と呼ぶ)である。さらに劇中で大空を舞い絶賛されるのは、まだ試作段階なので『九試単座艦上戦闘機』ということになる。
 あんまり詳しくないんだけど、アレ?ゼロ戦って脚は引込んでて、キャノピーは全閉型なんじゃなかったっけ…と気になり、ラストシーン間近に『これがキミのゼロか。美しいな』『一機も戻って来ませんでした』の会話で、アララこれっぽいかも?と勘付いた方、正解である。
 全面灰白色に日の丸、無敵の戦果を上げた初期型の一一型あるいは二一型あたりだろう。
 あ、『いちいちがた』『にいちがた』と読みます。よろしく。

 さて九六艦戦に話を戻すが、当時の日本海軍の呼称ルールに照らして、この日本最初の全金属製・単葉単座戦闘機は昭和9年に開発が決定され、皇紀2596年=昭和11年=西暦1936年に正式採用となった。
 そう、飛行機といえば木製の骨に帆布を張った複葉機がまだまだ普通の時代に、他国との武力競争に打ち勝つためこのレベルの設計を実用化したのである。

 私の母方の祖父【355】が生まれたのは明治32年=1899年、これは日清戦争の4年後であり、面白い所では牛丼の吉野家創業の年でもあるらしいのだが、実はこの時点でまだ人類は動力による飛行を実現していない。オットー・リリエンタールがグライダーの研究を繰り返すうち失敗して命を落としたのが1896年。ライト兄弟によるエンジン動力機の初飛行が1903年である。
 つまり人間は20世紀になって初めて飛行機を手に入れたことになり、その後の航空技術の発達がいかにどえらい勢いなのか、改めて驚くばかりだ。もうこの世にいないけど、ウチの爺さんは飛行機の無い時代に生まれてたんだぜ、凄いっしょ。
 日露戦争1904~05年がその直後であり、ここで日本海軍は日本海において露バルチック艦隊を撃滅し勝利を収めた。この時代、武力衝突と言えば上陸し大砲を撃って敵地に攻め込むか、軍艦同士でやはり大砲を撃ち合う制海戦が象徴的な形態だったのである。
 この頃の技術遺産が、現存する世界最古の鋼製戦艦『三笠』であり、艦内には日本海海戦の解説資料なんかもまだ展示されているはずなので、この夏ぜひ一度御覧になっておくとよろしかろう。因みに間近の売店にある『東郷ビール』は、泣いて喜ぶほど別格の美味だとまでは思わないけれど、訪れる度に記念行事として飲んだものである。

 飛行機に話を戻そう。
 第一次世界大戦1914~18年の直前あたりから、飛行機が武力として使われ始めたという。ただ、何しろ人類初飛行が1903年だから、たかが十年後のそれはロクなものではなかったらしい。最初はともかく武装を抱えて飛び立つだけの余力すら危うかったため、やはりというか、偵察任務が軍用航空機の始まりであった。
 おっとっとその前に、第一次世界大戦はぶっちゃけドイツが世界中を敵にまわして起こした戦争、ぐらいの知識は再確認しておいていただこうか。欧州のド真ん中で、例えば川や海峡の向こう側と戦争をやるのだ。うわわ、思いっきり御近所さんじゃないかよ。

 だからなのだが、どうにか飛べる飛行機が飛んだ瞬間、即刻武力に転用された。隣接する敵国陣地で、どんな規模の武力がどんな攻撃態勢を自国に向けているかは、限られた国力を投入する作戦立案にあたって非常に重要な情報であり、故に偵察任務は勝敗さえ左右する貴重な軍事機能だったのである。
 当然、敵対する両国から偵察機が飛び立ってお互いを探り合う構図となり、これらが空中で遭遇して撃墜し合うなりゆきとなる。最初は石ころやレンガを飛行機に持ち込み、相手の上空に回り込んで、これらを投下するという原始的な格闘手法から始まったそうだ。
 複葉で帆布張りの、単座なり複座なりの飛行機が、一生懸命にお互いの上空を取ろうとする。当然、そのうち鉄砲を飛行機に持ち込んで、下から撃ち返すヤツも現われる。
 飛行機に乗って手持ちの銃をぶっ放すというのも命中率が悪すぎたらしいのだが、ギア同期でプロペラの間から弾を撃つという技術【309】も無かったので、最初の固定銃はプロペラの回転軌跡をよけた斜め上向きだったという。
 電車の窓から斜めに銃を突き出して、車窓から見える対象物を狙撃できるかどうか想像していただきたい。さぞかしフラストレーションの募る空中戦だったと思われる。

 実に世界がこの程度の技術力だった時代から、僅か十数年で日本国は『九試単座艦上戦闘機』に到達しているのだ。現代をして『時代が進展するスピードが加速している』のではなく、高度経済成長期からバブル期あたりに、極端に『時代が進展するスピードが遅くなっていただけ』なのではないだろうか。

 確信犯で始めた話題ゆえ、ほんのサワリで一回使ってしまい、無論もっともっと続く。
 当面、議会制民主主義の基本をきっちり守って、是々非々を厳守して行けば問題ないかな。
 起きている事実をしっかりと発信しながら、まだまだ頑張ってくれよ野党たち!
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